-裁判の経過と組合員の思い5-

全国委員・竹中正陽

 今年1月に東京地裁で出された、組合長当選無効判決、北山元中執の統制処分無効判決、以降の動きについて報告する。


北山元中執が復職
 今年1月東京高裁で、北山氏に対する自宅待機命令無効、給与差額と200万円の慰謝料支払いを命ずる判決が出された。
 組合側は上告を断念し、北山氏は2月13日より総務部(専任部長)に復職し、4月からは外航部(専任部長)勤務となった。
 最新の協約書をもらいに組合を訪れた私は、同氏が席にいたので依頼したところ、協約書を見ることすら許されていないというので、近席の担当執行部員に頼んだ。
ところが、担当氏は凍りついたように硬直、返事すらしてもらえない。付近の誰もが下を向き、顔も合わせてくれない。
 異様に張り詰めた空気に、来てはいけない所へ来てしまったようで困ってしまった(協約書は後刻ようやく貰うことができた)。
 聞けば、北山氏は他の従業員からほとんど口を聞いてもらえず、会話どころか朝のあいさつすら無視されているという。仕事も一日中パソコンに向かって、インターネット上の海賊情報の英文和訳を際限なく行っているとのこと。
 氏は復職後のパワハラについて新たな訴訟を提起したという。


東京高裁が早期結審
 5月15・16日、北山氏の統制処分無効裁判、組合長当選無効裁判が東京高裁であった。
組合側は4名の法律顧問を含む9人の大弁護団を組織、本部・関東地方支部から10人以上の傍聴者を動員した。
 法廷では、「新たな準備書面を提出し、組合長の陳述もしたい」という組合側に対して、裁判長は、「必要性が感じられない」、「時間延ばしではないか」、「一審でなぜ負けたと思いますか」等と次々に詰問。組合側はしどろもどろの答弁を繰り返すばかり。果ては、「組合に損害賠償責任を発生させた藤澤さんはなぜ統制処分されないのか?」と問われる始末だった。
翌16日の組合長当選無効裁判では組合側は更に劣勢で、藤澤組合長の証言は却下され、次回6月28日で結審とのことである。
 国内部委員会で代議員の質問に対し組合長は、今までは外国出張等で忙しかったが今後は自ら法廷に出る、弁護団も拡充し、執行部も傍聴させる、と意気軒昂だったが法廷の様子は全く逆であった。


岸本恵美さん裁判
 組合本部事務職員・岸本恵美さんが、「依命休職処分無効・解雇無効」を求めている裁判は、東京地裁で弁論が続いている。
 3月の法廷で裁判長は、「海員組合にも春が来ますよ」と微笑みながら述べたとのこと(岸本恵美さんを励ます会ニュース3号)。
 4月27日の第5回から裁判長が転勤のため交代。満員の傍聴席を前に新裁判長は、組合側に対して矢継早に質問を始めた。突っ込んだ内容に組合側は即答に困り、次回までに書面で提出しますと答えるのが精一杯だった。
 処分理由である「パソコンの私的利用」の中には、3・11大震災の際にニュースを見ていた時間や、前任者である派遣社員の「私的利用」もカウントされていることから、岸本さん側は前任者や組合役員のクリックログの提出を求めたが、提出されなかった。
 この日から組合側は田川・竹谷弁護士に加え、新たに大熊、相馬、堺の3人の法律顧問が加わった。
今日までの組合側の主張は、「依命休職処分は、懲戒処分ではない」、「本件は解雇ではなく、依命休職期間満了による退職である」、「組合の情報関係管理基準はJSSにも適用される。JSSにもメールで周知した」、「ヤフーなど許可されていないサイトへの不正アクセス、私用メールは情報関係管理基準違反である」、というもの。
 書面による双方の主張はほぼ出尽くした感があり、近く証人尋問に移ることが予想される。


組合大会の前倒し?
 例年11月に開かれてきた組合大会が、今年は10月初旬の予定という。その理由は今年1月に出された「組合長当選無効判決」にあると言われている。
 同判決は平成22年の組合長選挙について、藤澤現組合長らが北山元中執の「入場拒絶を指示したのは、原告に対する故意による共同不法行為」であるから、「被告藤澤洋二の当選が無効であることを確認する」とした。
 組合側は高裁に控訴したものの、劣勢は明らかで、早ければ夏にも高裁判決、最短で11月の大会前に最高裁で組合長の当選無効が確定する可能性がある。
 そうなれば、組合長不在のまま大会が開かれ、責任問題が大きく浮上することになる。
40年位前まで、創立記念日の10月5日に大会が開かれていたが、年度末が7月のため、活動報告・決算報告をまとめ、次年度活動方針と予算案を中執内で十分論議するには無理が生じる。また2ヶ月近い大衆討議を保障するためもあって、11月開催に変更した。
 いわば、「大衆路線」ゆえの11月開催である。また、大会に合わせて休暇を取る代議員もいる。それらを犠牲にしてまで、なぜ大会を早める必要があるのか?
仮に、大会前に組合長の当選無効が確定することで、現体制の維持や次期役員選挙構想に支障が出たとしても、それは、自ら撒いたタネで、致し方ないものである。
 指導者は自らの責任を組合員や、大会の準備作業をする組合職員にしわ寄せしてはいけない。大会の開催時期は組合の「大衆路線」に関わる重要な問題なのである。


全国委員選挙日程も変更
 大会を前倒しすることで、規約に基づき告示された全国委員選挙の日程も変更しなければならなくなった。(組合規約では大会一ヵ月前に議案を送付)。
現在全国委員選挙が行われているが、1月31日の組合長の選挙告示では、投票期間は8月17日までとされていた。ところが立候補者名を掲載した船員しんぶんでは、投票期間がいつのまにか8月1日までに変更されている。
 全国委員選挙規則では「不測の事態が生じた場合は、中央選挙委員会は、中央執行委員会の承認を得て、その日程を変更することができる」とし、「遅滞なく、その理由とともに告示しなければならない」とある。しかし、「理由を付した告示」は行われておらず、「不測の事態」の内容も不明である。
また、立候補者名簿(船員しんぶん号外)が手に入らないので問い合わせたところ、各人の投票用紙に 同封する分しか印刷していないので、船内に事前配布する分はないとのことであった。
 執行部が訪船して投票用紙を配布し、その場で記入・回収するならば、組合員は考える時間が無くなってしまう。そのようなことがないよう、従来は立候補者名簿が前もって船内に配布されてきた。
 先月の国内部委員会で、これらの問題を質問するため手を挙げたところ、時間は十分あったにもかかわらず、構成員でない全国委員の発言は認めないとの「議長権限」で発言すらさせて貰えなかった。
長年かけて作り上げてきた民主的な組織運営が次々と放棄されているのが現状である。


組合規約の改正問題
 労組法5条は、「代議員の直接無記名投票」で役員を選出するよう義務付けている。本組合の代表指名や委任票が、労組法に違反するため、規約を改正するよう厚生労働省から指導を受けていることが発表された。
 この問題は数年前より大会代議員から指摘され、苦情申立すらあったにもかかわらず、本部は「全く問題なし」と言下に否定してきた。本部役員は代議員に対して真摯に謝罪する必要がある。
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 外航部執行部員の石川整君が今年2月に懲戒解雇された件は前号で報告した。しかし、船員しんぶんには一切報道されていない。
 石川君は3月に、東京地裁に懲戒解雇無効、地位確認を求めて提訴、新たな裁判が始まった。
(2012年5月31日)