-裁判の経過と組合員の思い28-

 
              内航組合員 竹中正陽(まさはる)

<中央労働委員会が命令>
『海員組合は団体交渉に誠実に応じなければならない』

 本年8月30日中央労働委員会は、海員組合に対し、従業員労組(海員労組=北山等組合長)に謝罪文を提出し、誠実に団体交渉に応じるよう命令した。
 2018年12月に石川県労働委員会から出された同様の命令に対し、海員組合が不服として中労委に再審査申立てをしていたもの。海員組合は命令を受け入れ、謝罪文を提出した。
 海員組合が、特定の元執行部員を定年退職後も長年にわたり優遇雇用する一方で、海員労組に所属する執行部員が、諸々の差別待遇(減給、遠隔地勤務、再雇用拒否、65歳での雇用打ち切り等)を受けて来たことに対し、同労組はたびたび団交を申し入れていた。
 団交の席上、海員労組は、「組合員が差別待遇されているかどうかを判断するため臨時雇用職員の採用条件及び労働条件について説明を」と申し入れた。
 しかし、海員組合側の交渉委員長である鈴木順三中執(現副組合長)らは、「中央執行委員会の判断による」、「労働条件は個別契約」、「個人情報は開示できない」、「回答を控えさせて頂く」、「それを知って何になるのか」等々と、のらりくらりの対応しかしなかった。
 中労委はこの対応を、雇用主としてあるまじき不誠実なものと認め、労働組合法7条2号の不当労働行為(不誠実団交)と認め次のように命令した。
〈命令主文〉
『海員組合は、「再雇用契約または継続雇用契約によらない定年後の雇用形態について、そ の採用の条件及び労働条件の説明」を議題とする団体交渉に誠実に応じなければならない。』
労働委員会から出された命令は、地労委と中労委を合せ、これで計13件になる。しかしこの命令後も未だ誠実な団交は開かれず、不当労働行為状態が続いている。
中労委では他に、昨年2月5日に東京都労委から出された命令の再審査が結審し、命令待ち
の状態にある(本誌31号参照)。
 なお、北山氏は海員組合の承認によらず、呉市の要請により呉海員会館(ビューポートくれホテル)の館長を継続している。


〈東京地裁〉
海員労組による損害賠償請求裁判2件が進行中

 北山氏は現在も呉海員会館の館長を勤めているものの、給与は呉市からの支払い分のみで、従来の半額以下に低下した。
 同氏は、海員組合に対して、不当な雇止めによる賃金未払い
分を支払うよう請求したが、海員組合は拒否。そのため昨年8月、本来の雇用主である海員組合に対して、雇止めがなかったら支払われたであろう賃金(不法行為に基づく未払い賃金請求権)を請求して提訴した。
 今ひとつは、今年2月に海員労組が提訴したもので、北山組合長の雇止め及び支配介入の不当労働行為により、労組として受けた有形無形の損害を海員組合に対して請求するもの。
 両裁判とも現在は書面合戦の段階で、証人尋問の日程等は未定である。
(続く)

全日本海員組合従業員労働組合
組合長 北山 等 殿
                    全日本海員組合
                    組合長 森田保己
 当組合と貴組合との間で行われた平成29年2月21日、同年4月17日、同年5月22日及び同年6月21日の団体交渉において、「再雇用契約または継続雇用契約によらない定年後の雇用形態について、その採用の条件及び労働条件の説明」の議題についての当組合の対応が、中央労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 今後、このようなことを繰り返さないようにします。

海員組合が提出した謝罪文