○バンカー船・航海士(40代)
外船=外国なのに何の検査もなし、マスクだけが頼り

 補油のため外船によく行くが、コンテナ船や大型バラ積み船はデッキが高いのでハシゴを登る時うんざりする。特に雨の日は最悪。
 最近は日本船でも日本人はまれで外国人船員ばかり。どの国の船員かは、デッキに上がって初めて分かる。船が何処の港から来たのか分からず、コロナが怖くてしょうがないから、立会人に任せて一切近寄らないようにしている。 それでもホースを繋ぐ時、中国やロシア系はまず手伝わないけど、フィリピン人は手伝おうと寄ってくる。そういう時は手伝わなくていいからとジェスチャーして近寄らせないようにしている。以前は、こいつら手伝おうともしないのか、と怒っていたけど、コロナが流行ってからはむしろ手伝わなくて助かっている。
 それでも相手船の受け入れ量の関係で、流速が遅いと1000キロ揚げるのに4~5時間掛かったりするから、途中でトイレに行きたくなる。小の時はしょうがないからトイレを借りるけど、大の時は感染が怖いから、代わりの人間に上がって来て貰って自分の船に降りて行くようにしている。荷役が終わって船に戻ったらすぐ風呂に入って全身洗い流すようにしているけど、最近は慣れてきたのか、だんだん気にしなくなっている自分を感じる。
 外船は本来外国なのに俺らは検査も何もなく、毎日のように上がって行く。防具と言えばマスクだけ。体温調べやアルコール消毒があるわけでもない。自船に戻ったら「もし本船でコロナが流行ったらお前が持ってきたんだ」と冗談で言われる。どう考えても不合理だ、何とかして欲しい。国は何も考えてないんだろうな。 俺らはどうせ英語をしゃべれないから黙っていれば済むけど、立会人は外国人船員と打ち合わせしなければならないから大変だ。でも彼らは慣れっこになっていて、マスクをしないで平気で笑い話をしたりしている。
 考えて見れば、俺らは荷役中立会人とずっと話をしているから俺らも危ないことになる。そう思うとぞっとする。手当でも貰わなければ合わないよ。(談)

○499黒油タンカー・甲板部見習い(20歳)
 老人ホームかと思った

 この船に初めて来た時は、40代1人、60代4人、70代1人で老人ホームかと思った。じいちゃんみたいな歳の人ばかりだけど、その割には良く動くので二度びっくり。
 大学を途中でやめて居酒屋に勤めていたけどコロナで廃業したので、海技学院に入って6級免状を取った。船には5年位乗って資金を貯めてレストランをやるつもり。料理の勉強もしている。
 でも何かあった時のための安全弁として、できれば4級免状を取って航海士の仕事をマスターしておきたい。こう見えて、人生の計画をちゃんと立てているんですよ。(談)