宝運丸衝突事故に思う
(内航タンカー船長)

 船長になって20年、関空沖には何回も避難している。保安庁が関空から3マイル以内はアンカー禁止と推奨しているなんて聞いたこともない。実際すぐ近くにアンカーする船は沢山あるし、注意されたこともない。3マイル以内がダメなら、大阪湾の錨地が三分の一くらい狭くなってしまう。
 だけど、さすがに関空の内側にアンカーしたことはないですね。流されたら怖いから普通しないでしょう! 宝運丸は関空から許可を得て、専用錨地みたいになっていたんじゃないかな。そうとしか考えられない。でもこれだけ問題が大きくなった以上、関空は口が裂けても許可したとは言わないでしょうね。
 もう一つのミステリーが、何故立て直せなかったのか?ということ。走錨はよくあるけど、普通、風向きから15度も流されたらエンジン使って立て直すはず。エンジンは掛けていたようだから、動作が遅れたのかなあ?
問題は風速かな?風速計の上限は普通60m、振り切れたという説もあるらしいけど、60mなんて想像を絶する世界で考えられない。今まで経験したのは、せいぜい37~38mで、瞬間的に40mに振れる程度。それでも雨も凄いし必死ですよ。
 結局、荷主やオペレーターは強いから、中々本当のことは出てこない気がする。最終的な責任が船長にあるのは分かるけど、賠償と言われても個人や下請会社では払いようがないですよ。結局何処かで折り合いが付けられるのでは?(談)