海員組合が8連敗
 今年に入ってからの裁判結果を確認しておく。


1月 1億円裁判・最高裁決定
 「ブログで誹謗中傷されたため、組合員が減少した」と言い掛かりをつけ、北山元中執に1億円を請求した裁判。1月19日に最高裁は上告を棄却し、海員組合の完全敗訴で終わった。
 2013年の提訴時には、船員しんぶん1面で「偽計業務妨害で告発、損害賠償金1億円を請求」と大々的に報道したが、負ければだんまりを決め込む。活動報告書にも何も書かれていない。都合の悪いことを隠す体質は相変わらずだ。1千万円近い費用が掛かっていると思われるが責任は誰が取るのだろうか。無責任極まりない。


1月 北山元中執の再雇用裁判・北山氏勝利の地裁判決
 1月29日、再雇用拒否は違法、北山氏の再雇用職員としての地位を確認する判決が出された。
裁判所は、海員組合に対してバックペイを払うよう命令したが、組合は従わず、1千万円の供託金を払って高裁に控訴した。


2月 道東支部・渡邊執行部員の処分無効判決が出る
 2月23日、東京地裁は元大阪支部長・渡邊執行部員のヒラ部員への降格無効、1カ月減給の懲戒処分無効、大会や執行部会議に出席させなかったことを違法とし、海員組合に過去5年分の差額賃金を払うよう命ずる判決を出した。
 判決は大阪支部長解任・根室転勤を左遷人事・権利の濫用と認定し、逆に、森田中執(現組合長)がフィリピン船員組合のオカ議長の死に際して「今後も担ぐ神輿であることは変わりない」と発言したり、藤澤組合長を揶揄したことを「不適切である」と断定した。
 松浦副組合長が「誰にものを話してるんだ、おまえ!」と恫喝した「本部呼び出し」も違法とされ、組合と共同で百万円の慰謝料を払うよう命じられた。組合は控訴を断念し、渡邊執行部員の勝利で裁判は終了したが、不法行為と明確に断罪されたにも関わらず、判決内容を捻じ曲げて報道(17頁の資料参照)、反省のかけらもない。
 処分されるべきは森田組合長・松浦副組合長の方なのである。


3月 阿部元小名浜支部長の再雇用拒否無効の判決出る
 3月23日東京地裁は、再雇用拒否の無効、海員組合にバックペイを払うよう命じる判決を出した。
海員組合は判決に従わずに控訴、阿部氏も期末手当支払いが認められなかったことを不服として控訴し、舞台は高裁に移った。

7月 北山元中執の再雇用裁判・高裁でも北山氏が勝利
 1月の地裁判決に続いて、高裁も7月5日に北山氏勝利の判決を出し、地裁が却下した期末手当(年2回のボーナス分)についても、過去分だけでなく、今後の分まで払うよう命じ、海員組合の手法を更に断罪した。海員組合はこれを不服として最高裁へ上告した(後に敗北を認めて取下げた)。

7月 石川県労働委員会が北山元中執を再雇用するよう海員組合に命令
 7月25日、石川県労働委員会は北山氏の再雇用拒否を不当労働行為と認定し、北山氏を原職復帰させるよう命じた。海員組合は中労委への再審査申立を断念し、8月1日付けで人事を組織内に発表。北山元中執が3年振りに復帰することになった。


8月 竹中勝利の地裁判決。
 長崎大会の組合長選挙は違法
8月5日東京地裁は、組合が竹中の組合員資格をはく奪したことは違法、長崎大会での組合長選挙立候補を認めなかったことも違法と断定。組合と松浦副組合長が共同で165万円の慰謝料・弁護士費用を払うよう命じた。
(以上、前号まで)

◯海員労組による損害賠償請求裁判
またも海員組合が敗北、田中副組合長の違法行為も認定
 9月30日、東京地裁は海員従業員労組(海員労組)の請求を認め、海員組合と田中副組合長に対し、共同して33万円の慰謝料を支払うよう命じた。この結果、今年に入ってからだけでも、海員組合側の8連敗となった。
 3年前の4月、阿部元小名浜支部長(当時釧路海員会館の館長)への「本部呼び出し」による取調べに端を発して海員労組が結成された。その後、阿部氏の再雇用が拒否されたため、海員労組は労働協約の締結と阿部氏の再雇用を要求して交渉を申し入れたが、海員組合側は色々な難クセを付けてこれを拒否。
 『被告田中は、「組合長代行」を名乗って、被告海員の交渉委員の中で最も上位の者として出席した。交渉のほとんどは原告の組合長である北山と被告田中の間で行われた。』と判決で認定されているように、田中副組合長自ら陣頭指揮して、従業員規定(労基法の就業規則に該当)を労基署に届けなくても違法ではない、等と海員労組の要求を突っぱねていた。
 判決は、被告組合側の行為を労組法7条2号の不当労働行為(団交拒否)と認定し、「労働委員会命令で救済されているので、損害賠償による民法上の救済は必要ない」という組合側の主張を却下した。興味深い判定なので引用する。
『不当労働行為と不当行為の関係
 憲法28条は、使用者その他の関係者に対し、労働者の団結権、団体交渉権等を尊重すべき公序を設定する効果を有すると解される。
 不当労働行為を禁止する労組法7条は、労働委員会の救済命令による行政救済を図る規定であるとともに、憲法28条に基づく団結権、団体交渉権等の保障を具体化する現行の労使関係法上の基本的な法規範として使用者に許されない行為を類型化したものであり、労働組合が事後的に労働委員会の救済命令が発せられるまでの問の団結権、団体交渉権等に基づく利益の侵害を甘受しなければならない理由はなく、不当労働行為を事実上是正して、将来に向けて労使関係の正常化を図ろうとする行政救済では十分に回復されない損害を不法行為に基づく損害賠償で私法的に救済する必要もにわかには否定できない。
 したがって、労組法上の不当労働行為制度と民法上の不法行為制度は趣旨・目的及び要件・効果を異とする別個の法制度であるが、公序並びに民法709条における「権利又は法律上保護される利益」及びその「侵害」の概念を介して関連し、民事訴訟における審理の結果、不当労働行為が成立し、かつ、相当因果関係の範囲内で損害が発生し、使用者に故意・過失があると認められるときは、(中略)不法行為が成立すると解するのが相当である。』
そして、田中副組合長の責任について、次のように理論づけた。
『被告田中の責任について
 被告田中は、相当に大規模な組織を形成する労働組合である被告海員の副組合長であり、自ら組合長代行として第1回団体交渉に出席し、被告海員の交渉委員として主要な役割を果たし、労組法その他の法令や労働組合の実務に関する知識・経験を相当に有し、被告海員の原告に対する意思決定において、組合長の補助、部下の指揮監督、中央執行委員会における討議等を通じて相当な影響力を及ぼしうる地位におり、中央執行委員会は原告に対する対応方針を全会一致で決定しており、被告田中が自らの意見とは異なる中央執行委員会の決定に従わざるを得ない状況にあったことはうかがわれないから、相当な注意を払えば、適切な方針を定めて、合理的な根拠がないまま、被告海員が団体交渉に速やかに応じず、その一連の行為として第1回団体交渉で団体交渉に消極的な態度を示すことを防止することができたと推認されるから、少なくとも過失責任は免れないというべきである。
 従って、被告田中は、民法709条に基づく損害賠償責任を負う。』
 その上で、海員組合の組織としての責任を次のように判定した。
『被告海員の責任
 被告田中は、被告海員の副組合長で、被告海員の事業のため使用される被用者であり、その不法行為は、被告海員が使用者責任(民法715条) を負うべき事業の執行についてのものである。
 また、被告海員は相当に大規模な組織を形成する労働組合で、(中略)団体交渉に速やかに応じず、その一連の行為として(中略)したことは、被告海員の組織体としての活動の一部を構成するものでもあるから、被告海員自体も少なくとも過失責任を免れないというべきである。』
 このように、田中副組合長の不法行為により、組合は被用者責任を負ってしまったのである。


阿部元小名浜支部長
組合が訴訟継続を断念して和解、阿部氏勝利で終了
 東京地裁で、再雇用拒否は違法、阿部氏の地位確認とバックペイ支払いを命ずる判決が出されたが、海員組合は従わず高裁に移っていた。しかし、裁判所の勧めにより9月6日に和解が成立した。
内容は、①海員組合は阿部氏に対し、解決金として再雇用拒否から65歳の誕生月までの3年分の給与相当額を支払う。②阿部氏が平成25年5月末で退職したことを両者が確認する、というもの。この結果、控訴は取り下げられ、阿部氏に3年分の給与が支払われて決着した。
 役員の身勝手で違法な人事により、また組合費が浪費される結果となった。


海員組合が謝罪文を提出、
北山元中執が原職復帰

 海員組合は7月25日の石川県労委の命令に従い、中労委への再審請求を断念したことを海員労組に表明。海員組合による3度目の不当労働行為が確定し、森田組合長名の謝罪文を提出した。
この結果、北山元中執は8月1日付けで、3年前に遡って再雇用職員に復帰し、この10月より原職である呉海員会館の館長として勤務している。


◯竹中の組合員資格確認・組合長選挙無効裁判
海員組合は地裁判決に従わず、舞台は高裁へ
 組合と3人の被告(森田組合長・田中・松浦副組合長)は、地裁判決を全面的に不服として8月18日に東京高裁へ控訴した。その後私も、2013年組合長選挙の無効、謝罪文の掲示、森田・田中副組合長の不法行為責任に絞って控訴、舞台は高裁に移った。
本件が他の裁判と違う点は、役員が一般組合員に対して、組合長選挙・全国委員選挙の立候補届無視や会計帳簿の閲覧拒否など一連の規約違反を行った点にある。


今後の裁判予定
◯海員労組による損害賠償請求裁判(再雇用拒否問題)
11月18日(金)午前11時半
東京地裁519号法廷
◯竹中の組合員資格確認・組合長選挙無効裁判
11月30日(水)午前11時
東京高裁808号法廷

Ⅸ 執行部員懲戒処分等無効確認請求事件の経過について
 組合従業員に対する懲戒処分を含む一連の処遇を不服として、道東支部執行部員渡邊長寿君が東京地方裁判所に提訴した、懲戒処分等無効確認請求事件に対する判決が2月23日に言い渡された。(平成26年(ワ)第7300号)
 本組合は、適正な人事評価に基づく一連の処分であることを主張したが、判決内容は、懲戒処分ならびに北海道地方支部副支部長の解任処分などについては無効との判断が示される結果となった。
 裁判所からは、人事評価の基となる人事考課について十分には明文化されておらず、一連の処分は重すぎるとの判断が示されたが、従業員規定と人事考課のさらなる明文化を図ることが必要であると認識し、この司法の判断に対しては控訴せず受け入れることとした。

資料:今年度の「活動報告書」8頁より


(次号につづく)