-裁判の経過と組合員の思い9ー

内航組合員・竹中正陽

 2004年に役員選挙を巡る権力抗争が開始され既に9年。北山元中執の解雇、井出本前組合長らに対する損害賠償裁判からも5年の歳月が流れた(末尾の裁判一覧表参照)。
 しかし「組合内紛」は一向に止まる気配はなく、ここにきて北山元中執への一億円損害賠償裁判、藤澤組合長の統制処分に及んで、末期的症状を呈しているといって過言ではない。前号以降に起きた内容を報告し、今後海員組合はどこに行くのか、現場組合員は何をなすべきか、共に考えてみたい。


北山元中執に対する1億円の損害賠償請求
 7月5日の組合機関紙・船員しんぶんは一面横一段ブチ抜きで「偽計業務妨害で北山等氏を告発」、「損害賠償金1億円を請求」と大きく報じた。
 北山ブログ『いかんぜよ海員組合』の内容が、「組合組織や個人に対する中傷、侮蔑、罵詈雑言など多くの事実無根の誹謗中傷をインターネット上で公開している」、「組合組織や個人の社会的地位、社会的信用をも失わせ、組織運営に重大な混乱をきたすおそれも懸念せざるを得ない状況となっている」として、6月28日に東京地裁に告発したというものだ。
 そして「海員組合は総力を挙げ、現場組合員とその家族の生活を守るため、組合諸活動に対する妨害行為や、組織破壊活動に対して絶対容認できず法的措置をとったものである」と結んでいる。
 民事上の損害賠償請求は「告発」ではなく、「提訴」や「訴え」を使うのが普通だが、用語の是非はともかく、突然の物々しい見出しに組合員は驚いたに違いない。
 1億円の根拠は何も書かれてないが、北山ブログによれば、流された誹謗・中傷により、「団体交渉や組合諸活動で交渉相手から軽んじられ」、「組合員が組合離脱を考えたり、海事関係者が海員組合を侮蔑するようになり」、「その対策に翻弄され、多大な時間と費用を要することになり、原告の蒙った損害は1億円を下らない」とのことである。
 しかし9月20日の全国評議会ではこの件について何も報告されず、承認も得ていない。
 組合の機関紙誌発行に要する費用は例年およそ1億円。それに匹敵する莫大な損害ということになる。被害が拡大する前に何も手を打たなかったのか、幹部の責任問題も浮上する。まして北山氏は現役執行部として、昨年まで本部にいたのだから、注意も何もしなかったでは済まされない。
 仮にこのような「事件」が発覚したら、組合は、執行部員(定年後は再雇用職員)である北山氏に事実を質し、改善や中止を指示しなければならないはずだ。
 それでも改善が見込まれず、被害も大きい場合は、組合規約に基づく統制処分、従業員規定に基づく懲戒処分を行うことになる。
 それが労働組合のとるべき手順だと思う。
 またこのように「多額」な問題は、罪状や被害額の根拠、提訴の理由を組合員に報告し、承認を得て進めるのがあたり前である。
 しかし、前回の統制処分(最高裁で無効が確定)と同様、そのような手順を踏んだ形跡はない。


損害賠償裁判始まる
 9月26日、東京地裁の第2回弁論の傍聴に出かけた。傍聴者はわずか4名(うち組合執行部2名)にも関わらず、組合側は9人の大弁護団を組織し、法廷は張り詰めた空気に包まれていた。
 組合は厚さ10センチにも及ぶ重そうなファイルを証拠として提出。平成23年6月以来のブログを大量に印刷したものらしい。
 組合側によれば、コメント欄を含むブログ全体が自作自演で、たとえ本人が書いたものでないにせよコメント欄にも管理責任が及び、名誉毀損部分を削除する義務があるとのこと。
 北山氏側は藤澤組合長の統制処分で代表者が不在になったことにより、藤澤氏から委任を受けた弁護士が裁判の代理人であることに疑義を唱えた。
 それに対し組合側は、「組合の内紛問題は、この裁判とは関係ない。弁護士の選任とも関係ない」と答えたのが印象的だった。組合自ら、「内紛」を認めたからだ。
 組合側に対して裁判長は、損害の具体的中身を明らかにするよう求め、次回組合は損害額の根拠を具体的に示すことになった。このやりとりから、組合は1億円の算出根拠を何も示さないまま、裁判に打って出たことが伺えた。
 次回は11月18日(月)13時15分、415号法廷とのこと。
 また、北山氏は昨年8月以降再雇用職員として呉海員会館に勤務してきたが(1年毎の契約更新制)、1億円裁判が提起された後、2年目の契約更新を拒否され、事実上解雇された。
氏は契約継続を求めて東京地裁に労働審判を申立てたが、審判官の判断で本裁判に移行し、審理されることになった。


ーパワハラ裁判ー
藤澤組合長の証人尋問決定

 9月6日東京地裁で、北山氏本人、松浦中執、鈴木総務部長、森田副組合長、浦総合政策部長の証人尋問が一日かけて行われた。
 2012年1月の高裁判決(自宅待機命令無効)を組合は受け入れ、2月から北山氏を本部総務部長付として復帰させ、先任事務職員の指示の下でパソコンを使っての組合員登録業務を行わせた。
北山氏によれば、OCRを使わずにわざわざ手入力をさせる屈辱的なもので、苦情を申し立てたが「中執が決めたコト」という回答だった。組合長あてに苦情の再申し立てを行ったが、何も返事がないので提訴したとのこと。
 外航部では、インターネットに毎日のように発信される英文の海賊情報を際限なく和訳するだけ。結果の報告も求められず、全く無意味な作業だったという。
 回覧文書は廻してもらえず、書棚に鍵を掛けられ書類を見ることも出来ない。労働協約書を求めても1ヵ月半の間見せてもらえなかったとのこと。
 組合側の証言は、組合員登録も英文和訳も重要な仕事で、部員の業務分担を決めるのは部長の任務。局長にその権限はなく、実際何も関与していない、というもの。
 しかし、疑問を感じたのか裁判官が矢継ぎ早やに質問を開始。
 その結果、部長は、目の前の席で北山氏が毎日パソコンに向かっているのを目にしながら、内容を何も確認しなかったこと。英文和訳は通常翌日の午前中には出来上がるもので、報告がない以上、作業をこなしていないことは分かっていたこと。北山氏に負担を掛けてはいけないと思い報告を求めなかったこと。結論として、外航部にいた5ヵ月間で一枚も和訳結果を点検せず、局長にも報告しなかったことが判明した。
 また海賊情報の和訳がないと困るので、同じ業務を他の部員にも指示していたと証言。裁判官はしきりに首をかしげていた。
 この日で結審と思われたが、北山氏側は藤澤組合長を証人に申請。組合側は反対したが、裁判官はそれを退け、藤澤組合長の証人採用を決定した。
 次回11月13日、午前11時より404号法廷。藤澤組合長の証言が注目される。


岸本恵美さんの休職・解雇無効判決出る

 9月13日東京地裁は、組合本部事務職員・岸本恵美さんの休職処分無効・解雇無効・バックペイの支払を命じる判決を出した。一昨年9月に休職処分無効の労働審判が出され、組合が異議申立をしたため本訴に移行していたもの。
 判決内容は、①6ヵ月の依命休職処分の無効。②休職処分満了に伴う解雇の無効。③休職処分中ならびに解雇中の賃金差額の支払。
 慰謝料支払と謝罪文の掲示は棄却された。また期末手当の一部について、「支給率を証明する証拠がない」ことを理由に棄却された(詳細は岸本さんの手記参照)。
 組合は中央執行委員会を開いた結果、判決を受け入れることを決定。岸本さんに対して、10月1日から本部総務部に出勤するよう指示を出した。
 このような場合、通常の企業であれば、まず処分を取り消し、解雇中の身分や社会保険の扱い、バックペイ額を確定して支払い、過去の清算を行う。その上で、今後再び紛争が生じないよう、復職時の基本給・有給休暇残日数、勤務地や仕事内容を本人と協議して決めるのが普通である。
 しかし組合は過去の清算も済まないうちに、いきなり出勤命令を出すという行動を取った。
 これに対して岸本さんは「復職に当たっての要求」を提出したが、組合が応じないため、地裁で棄却された部分について、東京高裁に控訴することにしたという。今後は、勤務に就きながら裁判を継続するとのこと。
 海員組合では過去にも、配置や仕事内容を巡って、事務職員が全国一般の合同労組に加入して交渉を求めた例が幾つかある。その際組合は真摯に交渉に応じて合意解決してきた。従業員と対話を重ねながら問題の解決を図るということを、なぜできないのだろうか。


藤澤組合長の統制処分

 9月20の全国評議会(大会に次ぐ議決機関)は、藤澤組合長の「全権利停止3ヵ月」の統制処分を決定した。今年4月9日に中央執行委員会が統制委員会に告発し、査問を行ってきたという(船員しんぶん9月25日号)。
 これが事実とすれば、現職組合長の統制処分であるにも関わらず、5月の全評に報告することもなく、機関紙での報道もなかった。一般組合員に対して、すべて秘密に審議していたことになる。
藤澤氏の罪状は何か?無記名投票の投票数は?船員しんぶんには何も書かれてないが、前日の9月24日、中執委は記者会見でそれらを発表したという。
 日本海事新聞によれば、「藤澤氏による規約違反行為は二つ。一つは、組合規約の解釈について疑義が生じた場合には中央執行委員会が裁定・勧告を行うとした規約第54条に違反し、藤澤氏が同解釈を外部機関に依頼したというもの。
 もう一つは、反組織的な行動の処分を定めた第107条に該当する行為で、役員選挙が行われた昨年10月の定期全国大会直後、新体制を批判する私信を特定の人物に発信し、関係者への周知を指示したことが該当したという。
 全国評議会での同処分に関する評決結果は、投票総数46票のうち、賛成39、反対4、無効3票だった。」とのことだ。
 他の海事専門紙にも同様の記事が掲載されている。
 組合員に報告する前に外部の記者達に、しかも船員しんぶんより格段に詳細に発表するとは余りにも組合員を馬鹿にしている。外部の新聞報道で真実を知るという逆転現象が起きているからだ。
 3ヵ月後に藤澤氏が組合長として復職するかどうかも、私達組合員は知らされていない。
 それにしても、藤澤氏の行為のうち、「外部機関への解釈の依頼」は、規約違反でも何でもないのではないか。「依頼」はあくまで依頼であって、解釈に困った時弁護士等の専門家に尋ねるのはむしろ当然だろう。幹部が独善で決定するよりずっと良いことだ。
 「私信」の件も、組合長としての指示でなく、あくまで「私信」であるなら、その内容を捉えて非難することは、個人の思想信条の自由を犯すことになる。電子メール等の「私信」で組合員に自分の考えを伝えたり、多数派工作を行ったとしても、それは個人に保障された自由の範囲内といえる。
 私信や個人的な発言が問題となるのは、企業相手に組織の秘密や内部状況を暴露した場合、集会やパーティーなど第3者がいる場で、組合幹部として言ってはいけないことを言った場合などだ。
 「私信」がなぜ公になったのかも問題だ。仮に組合のパソコンを使ったとすれば、組合長が監視されていたことになり、他の役員のメールも調査しなければ公平な処分とは言えない。疑問は尽きない。
 私信の内容は何なのか。どこが悪いのか。組合長は我々組合員が選挙で選んだ以上、私信の内容と発信方法を組合員に報告し、その上で組合員の判断を仰ぐのが正しいあり方だろう。
 つい最近、北山統制処分の無効が最高裁で確定した結果、常任役員全員の規約違反が明白になったが、それに対する統制処分は全く検討されていない。それを抜きにした今回の処分は、多数派によるトカゲの尻尾切りと言われても仕方がない。
 統制処分は全評で決定した時から効力が発生するため、このままでは藤澤氏は11月の大会に出席できない。また仮に処分が確定すれば、来年の役員選挙にも立候補できなくなる。
従って藤澤氏が統制処分の汚名を晴らそうと思えば、大会に抗告するか、もしくは直接裁判に訴えるかである。不当な処分であるなら敢然と闘って欲しい。
 2004年以来の内紛は、去年の大会前後から更に複雑化して混迷を極め、ついに組合長の統制処分という前代未聞の事態を迎えてしまった。
 執行部員の統制処分自体が、敗戦直後の海員ゼネスト時の中央闘争委員会メンバーに対する大量の除名処分、朝鮮戦争に加担することに反対した執行部員を除名したとき以来とのことだ。
 最近になってまた、多数の執行部員、事務職員が志半ばで退職する道を選んでいる。海上技術部員の在職数も年々低下し、在籍専従から執行部になる例もほとんどなくなった。このままでは、執行部員が不足し、各地の支部活動にも支障を来たしてしまう。
 行き着くところに行き着く前に、組合員が改革の声を上げなければ、本当にこの組織は衰退してしまう。すべては現場組合員の肩にかかっている。


静岡地区で起きていること
 組合静岡支部は、従来支部長と執行部員、事務職員の3人体制だった。しかし昨年秋若い執行部員が将来に希望が持てず退職。代わりに来た先任事務職員と支部長も最近退職の道を選んだ。
 ところが新任支部長は、ほとんど支部に寄り付かず、組合員は困っている。苦情申立てを行っても回答をくれない。船内委員長の申請にも返事はない。
 地区大会の日程が分からず困っていたら、地区組合員に何の相談もなく、「地区大会は某日朝10時」というメモ書き残していつものように外出したという。
 清水地区は構成員全員が出席してもやっと10人という小世帯。従来、支部長と全国委員の有志が一生懸命現場を回り、成立するよう努力してきた。そうした努力の結果、昨年ようやく10人全員が揃い、初めて地区大会を成立させることができた。
 ところが、船内委員長の就任は認められず(従って船内委員長不在の会社がある)、大会も突然午前中に変更され、何の説明もない。
 組合員は連名で地区大会の時間変更を申し立てた。


○地区大会開会時間に対する異議申立て
 貴殿は私たち地区組合員に何の事前連絡も相談もなく、今年の地区大会を10月10日の午前10時から12時と決定しました。
 清水地区はタグボートや通船など港湾に勤務する組合員が多いため、従来地区大会は夕方5時以降に開催されて来ました。組合員はもちろん、全国委員や船内委員長の殆どが昼間勤務のため、夕方でないと出席できないからです。
 今年はいつまで経っても地区大会の日程が不明なため、再三支部を訪れましたが、貴殿はほとんど不在で行先不明のことも多く、電話連絡の取りようがありませんでした。また、職員に伝言を頼んでも返事は一切ありませんでした。
 ところが、本部への連絡期限である9月18日の朝、●●が支部を訪れた所、貴殿のメモ書きが事務職員の机の上に置いてあり、私たちは開催日時を初めて知った次第です。
 しかし朝10時の開会では、殆どの組合員が出席できません。勤務中の者はもちろん出席不可能です。前夜遅く、あるいは当日夜中過ぎまで仕事をした非番の者にとって、午前中はゆっくり休む時間帯です。
 従って、できるだけ多くの組合員が参加できるよう、開会時間を従来通り夕方に変更するよう要求します。
 当地区において地区大会を午前中に開くのは、地区大会を成立させたくない意図があるとしか思えません。そうでないなら、すみやかに私たちの要求を認めるよう、ここに異議申立てするものです。
 日程を決める際には、従来通り地区組合員の代表である私たちの意見を聞いて頂きたい。     以上
(次号に続く)


資料:海員組合と従業員(OB含む)間の裁判一覧


○既に終了したもの
1.北山元中執関連
①解雇無効裁判
(最高裁決定、組合側敗訴)
 2008年4月に組合は北山元中執を「普通」解雇。09年3月東京地裁・同10月東京高裁で解雇無効判決。10年3月最高裁で確定。
②組合住宅明け渡し裁判(最高裁決定、組合側敗訴)
 解雇に伴い、組合は北山元中執に対して組合住宅明け渡しを請求。北山氏は拒否。解雇無効裁判と併合された結果、同様に確定。
③「腐ったりんご」裁判(高裁判決を受け入れ、組合側敗訴)
 2009年11月、定期全国大会席上の答弁で、大内副組合長が北山氏を「腐ったリンゴ。周りを腐らすガスが出る。彼はそういう人間」等と発言。11年4月東京地裁・11年8月東京高裁で「名誉毀損による慰謝料支払」判決。大内氏は上告せず、確定。
④08年大会入場拒否裁判(高裁判決を受け入れ、組合側敗訴)
 組合は北山氏の大会入場を実力で阻止し、中央執行委員への立候補届も無効とした。北山氏は組合・藤澤組合長・大内副組合長に損害賠償を求めて提訴。10年10月東京地裁・11年10月東京高裁は、立候補届けを無効にしたことを違法として被告3者に慰謝料支払いを命ずる判決を出した。組合側は上告せず、高裁判決は確定した。
⑤降格・自宅待機無効裁判(高裁判決を受け入れ、組合側敗訴)
 北山氏の解雇無効が10年3月に最高裁で確定した後、組合は同氏を部長からヒラの執行部員に降格し、自宅待機命令を出した。同年7月、同氏は降格処分無効・自宅待機無効で提訴。11年8月東京地裁は降格処分無効の判決。しかし、12年1月東京高裁は降格処分に加え自宅待機も無効とする判決を出した。組合側は上告せず、藤澤組合長・大内副組合長に対する慰謝料支払命令、並びに北山氏の復職が確定した。
⑥10年大会の入場を求める仮処分決定(保全異議を取り下げ、組合側敗訴)
 北山氏が仮処分を申請。東京地裁は11月5日「組合は大会への入場を拒絶してはならない」の仮処分決定を出した。組合はこの決定に対し大会前日の11月8日に保全異議申立てを行ったが、同日のうちにこれを取り下げ仮処分決定は確定した。
⑦藤澤組合長当選無効裁判(最高裁決定、組合側一部敗訴)
 10年11月9日の定期全国大会で組合は、確定した仮処分決定を反故にし、再度北山氏の大会入場を実力で阻止した。北山氏は大会会場のロビーにも入れないまま、組合長選挙に立候補したが落選し、藤澤組合長の3選が決定。北山氏は大会入場阻止の違法・組合長選挙の無効を東京地裁に提訴。
 12年1月東京地裁は「藤澤組合長の当選無効、藤澤組合長・大内副組合長は慰謝料を支払え」と判決。
 しかし、12年9月東京高裁は「藤澤組合長の当選有効」、「大会入場を拒否した件について、藤澤組合長・大内副組合長は慰謝料を支払え」と変更する判決を出した。北山氏は最高裁に上告したが、13年3月28日最高裁は上告を棄却し、高裁判決が確定した。
⑧統制処分無効裁判(最高裁決定、組合側敗訴)
 11年1月、「組合と訴訟関係にある経営側に対して資料提供を行った。」という理由で組合は北山氏を組合員権無期限停止の統制処分を発令。北山氏は、統制処分の無効、組合および常任役員全員(組合長・副組合長・中央執行委員の計8名)に対する慰謝料支払、船員しんぶんへの謝罪文の掲載を求めて提訴。12年1月東京地裁・8月東京高裁は北山氏の請求を全面的に認める判決を出した。
 13年3月28日最高裁は組合の上告を棄却し、高裁判決が確定した。船員しんぶん6月5日号に、8名の常任役員連名による謝罪文「執行部員・北山等君に対する統制違反処分の無効とお詫び」が掲載された。
⑨プライバシー侵害裁判(組合側が提訴。地裁判決を北山氏が受け入れ、組合側勝訴)
 北山氏は自身が提訴し、勝利した裁判の判決文をブログに掲載した。そこに被告である藤澤組合長と大内副組合長の住所が記されていたことから、両氏は10年10月に連名で慰謝料支払を求めて提訴。11年8月東京地裁は、慰謝料支払を認める判決を出した。北山氏は控訴せず、地裁判決が確定した。

2.名誉毀損裁判(組合側が提訴し、井出本氏ら3名に対して勝訴、北山氏部分は敗訴)
 2008年6月、組合および組合役員ら17名が、井出本前組合長ら組合元役職員3名および北山元中執に対して損害賠償を求めて提訴。
 『「カルト集団(創価学会)が海員組合の組織と資産目当てに、組合を乗っ取ろうとしている」という文書を配布され名誉を毀損された。』というもの。後日、組合は北山氏に対しての提訴を放棄し敗訴を認めた。
 10年5月東京地裁・同11月東京高裁判決。井出本氏ら3名に対して名誉毀損・慰謝料支払を命じた。井出本氏ら3名は上告せず、高裁判決が確定した。

3、本部先任事務職員の降格処分無効の労働審判(和解)
 2011年5月、「パソコンの私的利用」等を理由に降格された事務職員が、降格無効・差額賃金・慰謝料支払等を求めて労働審判申立て。後日和解した(和解内容は守秘義務により公開されず)。

4、本部事務職員岸本恵美さんの函館転勤無効の仮処分(組合側敗訴)
 2011年3月、道南支部(函館)への転勤命令に対して、命令無効の仮処分申請。翌4月転勤無効の仮処分決定。組合は異議申立を行わず。

5、本部外航部執行部員の懲戒解雇無効裁判(組合側敗訴)
 2012年2月、組合は「パソコンの私的利用」等を理由に中堅執行部員を懲戒解雇。同年11月東京地裁の審理中に、組合は執行部員の請求を全て認め、民事訴訟法上の「認諾」を行ったため裁判は終了した。同執行部員は一旦執行部員として復職したものの、翌12月に先任事務職員に降格された。

○係属中のもの
1.北山元中執関連
①パワハラ・いじめ裁判

 12年2月、組合は自宅待機命令無効の高裁判決を受け入れ、北山氏を本部総務部に、4月からは外航部に復職させた(専任部長待遇)。しかし総務部で与えられた業務は、若手先任事務職員の下でパソコンを使っての組合員登録業務。外航部では、毎日外国のインターネットで発信される英文海賊情報の和訳で、和訳結果の報告義務もなかった。
 また外航部の打ち合わせから外され、周囲の職員から会話もしてもらえなかった。同氏はパワハラの是正と慰謝料支払を求めて提訴、現在東京地裁で審理中。
②1億円の損害賠償請求裁判
 13年6月、組合は再雇用職員である北山氏に対し、ブログによる誹謗・中傷を理由に1億円の損害賠償を提訴。現在、東京地裁で審理中。
③海員労組に対する団交拒否の不当労働行為審査
 13年4月18日、北山氏を組合長として「全日本海員組合従業員労働組合」が結成され、海員組合に対して暫定労働協約の締結と元執行部員(再雇用職員)の契約更新継続を求めて団体交渉を申し入れた。組合は団体交渉に応じなかったため、海員労組は東京都労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。現在都労委で審査中。
④契約更新拒否に対する労働審判
 13年8月、海員組合は北山氏の再雇用職員としての2年目の契約更新を拒絶し事実上解雇した。同氏は東京地裁に労働審判を申立てた。審判官は労働審判にはなじまないとして本訴に移行し審理中。

2.本部事務職員岸本恵美さんの休職処分・解雇無効裁判
 11年4月組合は、「パソコンの私的利用」等を理由に、岸本さんを6ヵ月の依命休職処分とした。同年9月、「依命休職無効、差額賃金支払」の労働審判が出されたが、組合が異議を申立てたため本訴に移行。
 13年9月13日休職処分と解雇無効の地裁判決が出され、組合は控訴を断念。岸本さんは棄却された年間賞与の一部と謝罪文の掲示を求めて控訴。高裁で審理中。

3.元執行部員(再雇用職員)の契約更新拒否裁判
 13年5月、元執行部員が1年間の再雇用の後、2年目の契約更新を拒絶された。元執行部員は契約更新拒絶の無効を求め、現在東京地裁で審理中。
(2013年10月15日現在)