船員の人権を守る会
2026年2月28日、アメリカとイスラエルは、イランに大規模爆撃を行いました。これらの武力行使は、国連憲章第2条4項が定める武力行使禁止原則に照らし、重大な国際法違反であると私たちは考えます。
それに対しイランは、イスラエル及び中東各地の米軍基地のみならず、非戦闘国の石油関連施設や米国船籍以外の商用タンカーにも攻撃を加え、更にホルムズ海峡の封鎖も宣言しました。イランの非戦闘国の商船に対するこうした攻撃もまた国際人道法および国際慣習法に反します。
現在ペルシャ湾には200隻以上の船舶が留め置かれ、うち日本関係船舶は45隻、5隻に24人の日本人船員が乗船していると報じられています。
既に攻撃を受けた民間船舶では多数の犠牲者が出ており、湾内に閉じ込められた船員が抱える恐怖には計り知れないものがあります。戦闘が長期化すれば食料や飲料水の枯渇に加え、常に攻撃の危険にさらされる精神的負荷は極めて深刻です。
船員は世界の物流を支える「エッセンシャルワーカー」であり、国家間の紛争の犠牲になるべきではありません。たとえ相手国の船籍であっても、一般商船への攻撃は許されません。また船員は、国際労働基準および団結権に基づき、危険な航行を拒否し、安全を確保するための集団的行動をとる権利があります。
国際運輸労連(ITF)と国際使用者団体(JNG)は3月2日にペルシャ湾・ホルムズ海峡・オマーン湾一帯を「ハイリスクエリア(HRA)」に指定し、さらに5日には「軍事行動区域(WOA:Warlike Operations Area)」に格上げしました。
これにより、船員は次の権利を具体的に行使できます。
1.乗船拒否権、帰国要求権
国際労働機関(ILO)が採択した海上労働条約の指針B2.5.1(1(b)(iv))には、商船が戦争地帯に向かう場合、船員が同意しないときは費用負担なしで本国送還を受けられると記されています。これがWOA指定により、危険を理由に乗船命令を拒否すること、また下船を申し出て船主負担により母国に帰国し、帰国した際に基本給の2カ月分を受け取ることが権利として明確化されました。
2.危険手当、災害補償
また、ITFとJNGの労使合意に基づく危険手当(基本給の100%増など)を受け取り、そのまま業務を続けることもできます。その場合、当該区域内で発生した事故による死亡および後遺障害に対する補償が倍増されます。
WOA指定の結果、船員は上記1または2を選択する権利を有します。
WOA指定を待つまでもなく、元来船員は次の権利を有しています。
3.船員が強制航行させられない権利
軍艦が護衛する場合であっても、船員に死の危険を伴う航行を強制することは、ILOの基本原則、および船員の権利憲章である海上労働条約(特に第4条「安全で安心できる職場」および規則2.5「本国送還」)に反する重大な人権侵害です。
4.船員の帰国の権利
海上労働条約(規則2.5及びStandard A2,5.2)は、船員の最大乗船期間を12カ月未満と定めています(実務的には11カ月)。旗国および船主には、これを超えて危険地帯に留め置かないよう必要な措置を講じる責任があります。条約の主旨に照らせば実質的な船主国や用船者も責任を負うべきです。「交代者がいない」という理由で正当化することはできません。
私たちは、旗国と船主国、また船主と用船者に次の措置を講じるよう望みます。
➀ 各船に連絡して帰国希望者の有無を確認し、希望者が速やかに帰国できるよう交通手段を確保すること。帰国希望者に対し、その後一切の不利益を生じさせないこと。
➁ 閉鎖された空間で攻撃の恐怖にさらされる船員のメンタルヘルスは極度に悪化します。家族との連絡に必要な衛星通信の無料開放、食料・水・医薬品の補給を遅滞なく行うこと。
私たちは、ITFおよび各国の船員労働組合が次の行動を起こすよう望みます。
➀ 自国政府に対し、アメリカ・イスラエルおよびイランの双方に直ちに戦闘停止を要請するよう働きかけること。
➁ ITFは、ILOやIMO(国際海事機関)などの国際機関を通じて、アメリカ・イスラエルおよびイランに対して戦闘を直ちに停止するよう要請すること。
➂ ITFは早急に国際会議を開き、アメリカ・イスラエルおよびイランが戦闘停止に向かうよう、必要に応じてストライキを含めた効果的な方策を協議すること。
私たちは、世界中の船員が自らの権利を再確認し、再び平和な海が職場となるよう強く望みます。
2026年3月12日
船員の人権を守る会









