船員法違反で国交省が処分
(編集部)
昨年9月24日、国土交通省四国運輸局はオーシャン東九フェリーを運航するオーシャントランス(株)に対し、船員法違反で戒告処分を行った(発表は11月7日)。
国土交通省は船員法101条の是正命令に従わない会社、過去2年間の船員法違反の累計が120ポイント以上の悪質な会社を公表することにしている。過去2年間の累計が120を超えたことから公表に踏み切ったとのことだ。
戒告処分が出されたことにより、同社は是正措置と改善結果報告書を提出する義務を負うことになる。
会社ぐるみの隠蔽・改ざんか
〇過重労働
船員を船員法に規定された労働時間限度(1日14時間、1週間合計で72時間以内)を超えて働かせた(65条の2違反)
〇割増手当未払い
時間外手当など必要な割増手当を払っていなかった(66条違反)
通常、国交省の発表に「~等」と「等」が付される場合は他の違反も重なっていることから、他にも多くの違反があることが分かる。
支払われるべき割増手当を払っていなかったということは、労働時間を記録した労務管理簿も改ざん(実際に働いたにもかかわらず、働かなかったことにする)していたのだろう。
また、過去の累計が120ポイントを上回ったことから、違反は1隻だけでなく同社が運航する4隻のフェリー全船であることが伺える。
近年同社では退職者が続出していることから、人手不足に陥り、必要な定員を載せていなかった疑いも生じる。
違法状態が長期に渡っていたこと、違法が単なる記載ミスではなく、会社ぐるみで行われていた可能性が高い。
※オーシャントランス(株)
王子製紙グループで外航・内航・フェリーを運航。本社東京、本店徳島。高松勝三郎会長、中内司社長。
オーシャン東九フェリーは東京―徳島―門司をフェリーどうご・フェリーりつりん・フェリーしまんと・フェリーびざんの4隻でピストン輸送。船員108名を雇用。
労働組合の無力、不存在
船員法違反で処分される船会社の多くは、俗にいう未組織会社、すなわち海員組合に所属しない小型船を運航する規模の小さい会社だ。しかし、オーシャン東九はフェリー大手で古くから海員組合に所属し、職場委員もいるレッキとした組織会社である。
そのような会社で、このような摘発が行われたということは、現場に労働組合が存在せず、職場委員制度も形骸化、それ以上に会社と一体化していることを示している。
会社体質だけでなく、何のための労働組合か、何のための職場委員制度かが問われている。
必要な是正措置
「過去の違法行為の全調査、時効を超えた手当の支払い」
違法行為の是正、特に時間外手当等の未払い賃金の是正とは、退職者を含めた全社員に過去の未払い分を遡及して支払うことを意味する。
そして賃金だけでなく、増額された賃金に応じた船員保険・厚生年金等の社会保険料の差額分を、労働者負担分を含めて会社が遡及して国に納める責を負う。違法行為を行ったのは会社であり、かつ、差額分の保険料を納めなければ、労働者が将来受け取れるはずの年金が減額されてしまうからである。
また、未払い賃金の時効は船員の場合5年、社会保険料の徴収権時効は2年と法律で規定されている。
社会保険料の遡及徴収は法律通り2年になるとしても、未払い賃金については、協約違反があった場合、かつて海員組合は、法律上の時効に関わらず、違反行為があった時点に遡って何年でも支払わせてきた。労働協約には時効という概念がないからである。
このような場合海員組合は、会社に資料を提出させ、いつから違反が始まったのかを調査し、全期間の未払い手当を払わさなければならない。現場組合員はそのように要求する権利を有している。
また、背景に人員不足があるのなら、不足が解消されるまでの間は現状数に見合った運航ダイヤに変更しなければならないはずだ。
そうでなければ、乗組員の健康も、船会社にとって一番大切な「安全」も保たれなくなってしまう。
「おーしゃんいーすと」事件
同社は2008年にもフェリー「おーしゃんいーすと」が、沿海区域限定にもかかわらず、遠州灘で海岸線から20海里を優にオーバー、はるか沖を走っていたため船舶安全法違反で船長が海上保安庁に検挙された。燃料費の節約と時間短縮が目的だったとされる。
九州運輸局が特別監査を行った結果、同船だけでなく会社ぐるみで恒常的に4隻全船が沖合航行していたことが判明。海上運送法に基づき「輸送の安全確保命令」が出された。
この件では同社の運航責任者である海務部長が逮捕されている。保安庁の取り調べで船長は「航行距離の短縮のため、約20年前からやっていた」と供述したが、海務部長は「知らなかった」とシラを切っていたと報道されている。
同社は、コロナ下においても、乗客の発症とは別に、乗組員にもコロナが蔓延し、クラスターが複数回発生したという。
そうでなくとも退職者が続出して人員が不足する中で、交代者がいないため満足に休暇を取れない乗組員、体調不良のまま乗船を続ける乗組員が出たとのこと。同社のフェリーでは、コロナ下においても船長主催の飲み会が行われた船もあったという。
古川甲板長の解雇問題
同社では、長年勤めて来た古川甲板長が、高松社長(現会長)訪船時の乗組員との懇談会において、会社体質の改善を求める発言をしたことをきっかけに解雇された。
現在徳島地裁と徳島県労働委員会で解雇無効・会社による不当労働行為の是非が争われている。
同甲板長は海員組合九州関門地方支部に苦情を申し立て交渉が行われたが、あいまいな経過を辿る中での解雇だった。交渉を担当した副支部長はその最中に辞職している。
同甲板長は海員組合に籍を置いたまま、地域の合同労組である徳島合同労組に加入し。解雇撤回を闘っている。
次ページに労働委員会において同甲板長が陳述した文章を掲載する。船員法違反と同じ会社の体質が根にあることが見てとれる。
(編集部)
徳島県労働委員会での古川甲板長陳述
令和8年1月16日
労働委員会の皆様へ
申立人 古川卓治
今回、被申立人提出の第7準備書面において、申立人に対し「息を吐けば嘘をつく」との極めて侮辱的な表現が用いられていることに、申立人は強い衝撃を受けました。
申立人は、これまで一貫して事実に基づき主張してきたつもりであり、このような人格攻撃的表現が準備書面という公的文書に記載されること自体、適切とは言えないと考えております。
また、申立人に関して「関わった者も同様に扱う」と受け取れる発言や、「古川に関する情報はすべて集めろ」との指示があったことを、申立人は複数の乗組員から聞いております。これらの発言については、発言者ご本人が最も認識している事実であると、申立人は考えております。
このような発言は、組合活動や職場での発言を萎縮させる行為に当たるものです。
会社は、申立人を粗暴で指示に従わない人物であるかのような書面を作成しておりますが、申立人側から提出した退職者の陳述書をご覧いただければ、そのような人物像が一方的に形成されたものであることは、労働委員会の皆様にもご理解いただけるものと思います。
なお、申立人は現在、徳島地方裁判所において地位確認請求訴訟を係属中です。
仮に勝訴のみを目的とするのであれば、乗組員との音声記録やSNSでのやり取りを、実名とともに提出するという選択もあり得ます。しかし申立人には、協力してくれた乗組員を、会社からの不利益取扱いから守る責任があると考えております。
申立人は、会社の不当な体質を是正し、誰もが安心して意見を述べられる職場環境を実現したいという思いから、陰ながら応援してくれる乗組員に支えられながら発言してきました。その結果として懲戒解雇に至りましたが、自身の行動について後悔はしておりません。
現在も、会社に意見を述べれば申立人のような扱いを受けるのではないかという不安から、声を上げられずにいる乗組員が多く存在します。船内アンケートでは、多くの乗組員が労働環境の改善を求めていたと聞いておりますが、現時点においても十分な改善がなされていないとの声があります。
本件不当労働行為が認定されることで、乗組員が口を閉ざすことなく、安心して意見を述べられる職場環境が実現されることを、申立人は強く望みます。
以上