離島航路の旅客船、減便相次ぐ(日本) 編集部

一、船員不足に悩む旅客船


 内航船の船員不足が叫ばれて久しい。今や船員の有効求人倍率は4倍以上となっている。フェリー業界も同様で、特に離島航路の旅客船は賃金の低さもあってか、内航への移籍を希望する人が多い。人口減少のみが原因でなく、若者の都市への憧れ・移住、地元漁業への嫌悪等による離島の過疎化が背景にある。その結果として、旅客・荷物の減少による採算悪化、そこに燃料代や修繕費の高騰が輪を掛ける。
 離島航路は「海の国道」に当たり、住民の命綱だ。経営難があれば本来国の責任で対処しなければならないはずだ。しかし近年の急激なコストの増大に対し、国の支援はまったく追いついていない。昨年来、船員不足が理由で運航停止や減便に追い込まれた航路を紹介する。

二、教員不足により館山海上技術学校が閉校


 今年6月、国交省は国立館山海上技術学校の来年4月の生徒募集を取り止め、2027年度末で廃校すると発表した。教員の確保が難しく、教育体制を維持することができなくなったことが理由だ。
 1980年代後半に日本船主協会の主導のもと、関係官庁、海員組合など海運界全体を取り込んで行われた緊急雇用対策という名の船員首切り。引き続き進められた混乗化・外国人船員化策による、日本人船員の採用停止、船員教育機関の縮小。その結果、教員を排出して来た外航出身の航海士・機関士の絶対数が減少した。今や教育機関に限らず、各船会社で運航を司る海務監督・工務監督などの技術者を筆頭に、海事産業全体が海出身の技術者不足にあえいでいる。まさに、緊急雇用対策以来の政策のツケが今回って来たと言える。
 国交省「内航未来創造プラン」では、海技教育機構の定員を400名から500名への増員を目標にしているが、具体的な道筋は示されておらず、絵に描いた餅になりかねない。
海技の伝承は、外航・内航・漁船が一体となって初めて成し遂げられる。内航のみならず、外航日本人船員を増加させる施策が急務である。

三、他山の石、韓国・アメリカの船員不足


〇韓国:カボタージュ緩和により船員不足は日本より深刻
 韓国の内航業界では、50歳台の船員の割合が約7割に達し、高齢化が深刻な事態になっている。それは、カボタージュ規制が徐々に緩和されてきたことが主因と見られている。
 従来は、カボタージュ制度のもと、取締役全員が韓国民であるなど自国船舶の定義が厳格化されていたが、1978年に一部緩和され、出資者の過半数、取締役の5分の3が韓国人、かつ社長が韓国人であれば自国船の定義を満たすとした。
 1999年にさらに緩和し、外国企業でも韓国籍船を保有すれば国内航路に参入できるようにした。加えて2003年には一部の港間で外国船によるコンテナ輸送を認めた。そして極めつけが、2004年に国内航路への外国人船員導入を条件付きで認めたことである。
 外国人船員の条件は、20歳~45歳の部員に限ること。6カ月~1年間の雇用契約とすること(但し延長可能)。内航海運業界全体で1200人に制限すること(当初は300人、その後700人、現在は1200人を限度)、1社に付き船員数の半数以下にすること。また乗船できる外国人船員数が船の定員別に定められている(表参照)。
 韓国では少子高齢化による人口減少という背景に加え、若者が閉塞的な船内生活や離家庭性を嫌い、船員希望者が減少、離職率も増加の一途という。

(定員別外国人可能人数)

(流通科学大学商学部・李志明講師著「韓国内航海運におけるカボタージュ規制の動向」などを参照した)

〇アメリカ:トランプ大統領にとって船員不足が障害
 今年4月、トランプ大統領は海運・造船業の弱体化が国防上の弱点と考え、軍の艦艇建造能力向上・兵站能力向上のため造船業と自国商船隊の復活、中国海運業の弱体化を目的とする新たな大統領令に署名した。中国製もしくは中国籍の船に入港料を課し、中国製、中国製の部品が使われているクレーンなどの港湾設備などに新たな関税を課すよう指示した。
 また、戦時に米国産の車や燃料、食料を運搬するために招集できる商船隊、特にタンカーや車両運搬船が不足しているため、急きょ造船体制を大幅に増やす計画で、これには共和党、民主党問わず、垣根を超えて協力しているという。
 しかし造船業の熟練工不足と共に、船員が圧倒的に不足しており、海軍も海運業者も船員の確保に苦労している。とりわけ船員不足が計画の最大の障害になっているとのこと。
 アメリカのダフィー運輸長官は「米船籍の船を増やしたいと思うなら、もっと船員が必要だ。現時点では米船籍の船を大幅に増やしても乗組員が十分にいない」と述べたと報道されている。

(2025・9・1)