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新六級制度と異業種からの未経験者採用について思うこと

 弊社では、船員の平均年齢も高くなり、乗船期間も3カ月を超えることも多くなってきた。そこで数年前から会社は、新六級制度を積極的に活用し、若い船員の確保・育成に取り組んでいる。
しかし、新六級の座学を終えて、乗船してきた未経験者は、いざ乗船したら、学校のテキストで習ったこととの違いに戸惑い、理不尽に老害から怒鳴られ、折角入社したのに、すぐ辞めてしまう。
今回、未経験者と乗船して思ったのは、船員不足解消のために設けられた制度にもかかわらず、現場である船と学校で習う内容が余りにもズレていること。
499トンの船では機関部も入出港作業をするので、レット投げ、係留索の送り出し、係船機操作など。また、機関部本来の発電機の並列、主機やポンプの運転、バラスト排出など、覚えることが山のようにある。それに通常の整備作業、当直が続く。
 陸の会社では研修期間があり、つきっきりで仕事を教えてくれる教育係もいるのに、小型船では部屋数も少なく、会社も定員以上に乗せる余裕もない。
会社は、未経験者を乗せて、あとは船に丸投げ。そして、新人を一人前に教育するのは船員の義務と言い出す始末。このままだと誰も未経験者と乗りたくないと言い出しかねないので、未経験者と乗船する時は、給料を倍にして欲しい(所得倍増計画)。
(499貨物船、機関長)

元々は「安全第一」の後に「品質第二、生産第三」

 どの船もハウスに大きく書かれている「安全第一」。その後に「品質第二、生産第三」が続くことは余り知られていない。
発祥は、アメリカのUSスチール。日鉄による買収話で注目を浴びている会社だ。時は1900年代始め、不況下のアメリカでは「生産第一、品質第二、安全第三」のスローガンの下、低賃金・長時間労働で労働者は馬車馬のように働かされた。結果、労働災害が多発、多くの人が命を落とした。
見るに見かねた同社社長はクリスチャンとして放っておけず、順番を変更、「安全第一」を最優先にし、品質や生産性は後回しで構わないとした。その結果、労働災害はみるみる減少した。
 USスチールは世界的な大企業、話は世界中に広まり、日本では1912年(大正元年)に古河鉱業足尾鉱業所の所長が「安全第一」を採用。災害が減ったため、各地に広まったとのこと。足尾鉱山と言えば、明治期に鉱毒反対運動に体を張って取り組んだ田中正造翁を思い出す。翁の心が所長に引き継がれたのかも知れない。
 造船所では「ご安全に!」の挨拶がよく使われる。しかし会社は「品質第二、生産第三」で構わないとは決して言わない。結局、自分の安全は自分で守るしかない。「品質や生産性は2の次、焦らず、確実に仕事をしようと自分に言い聞かせている」。以上、ある造船所の技師から聞いた話。
(499重油船、老機関長)