徳島合同労組オーシャン東九フェリー分会

【1】会長ら幹部4人が詰問、適応障害に
 こんにちは。オーシャントランス株式会社は、徳島合同労組オーシャン東九フェリー分会の分会長に懲戒解雇処分を出しました。35年間勤務する57歳の甲板長です。
 彼は、会社のホームページにある通り、東京ー徳島ー新門司を結ぶ大型カーフェリーで、200台の車両の積み下ろし、船体保守整備作業などをしてきました。
 8月13日にオーシャントランス東京本社で賞罰委員会が開かれました。会社側は、「非違行為」として5点をあげつらい「懲戒解雇・退職金不支給、予備的に普通解雇」の処分を出しました。絶対に許せません。
 非違行為とされた内容は次の通りです。
①匿名社内アンケートの妨害
②運航部長が入社3か月目の若手甲板員に事情聴取するというので、パワハラを懸念して甲板員にアドバイスし、ICレコーダーを持たせたこと
③他の甲板手、甲板員らに苦情はないか聞いたこと
④海員組合への苦情申立書を勤務時間中に甲板手、甲板員に渡したこと
⑤甲板員、甲板手に苦情申立書への署名・押印を強要したこと
 そもそも、①匿名アンケートと言いながら、後から会社が本人を特定して問いただすことは許されるのか。②パワハラ運航部長の事情聴取に入社3か月の甲板員が呼び出されて、パワハラの防御としてICレコーダーを持たせるのは非違行為なのか。③転船が嫌で号泣したといわれる甲板員を気遣い、大丈夫か?と声を掛けるのは非違行為か?甲板長として部下に心配りするのがいけないのか。④勤務時間中というが、休憩室でちょっと資料を渡したのが非違行為となるのか。⑤結局、署名、押印は無かった。それでも非違行為といえるのか。
 これらが、争点です。
 一事が万事、こんなことで、自主退職者の続出、懲戒解雇・退職金不支給とするオーシャンの現状。それを放っておくわけにはいきません。
 昨年9月には会長をはじめ4人の会社幹部に会議室で、甲板長一人が囲まれ、詰問される「聴聞会」がありました。
 脅迫観念に襲われメンタルダウンしたため診断書を提出したところ、それが会社側の事情聴取の業務命令を回避する「手法」だ、船員としての適格性がない、とまで断定されました。メンタルダウンした船員が傷病休暇をとることが「手法」だと決めつけるとは、まるで蟹工船の時代に戻ったかのようです。

◆これまでの経過
1989年:オーシャン入社
2017年:甲板長に昇進
2022年6月:甲板長、パワハラを理由に戒告処分
2023年6月:サロン会議
で高松社長に挙手質問
同年9月13日:高松会長ら4名から面接され、船を下ろされる。適応障害に
同年9月14日:海員組合に苦情申し立て
同年10月:「従業員との接触禁止」等の業務命令
2024年2月:海員組合に2度目の苦情申し立て
同年4月:病気回復しても乗船拒否される。海員組合在籍のまま徳島合同労組加入
同4月:第1回団交
同7月:第2回団交の後、会社側が第3回団交を拒否、さらに徳島県労委あっせんも拒否
同8月13日:賞罰委で「懲戒解雇、退職金不支給」。支援する会が発足。解雇撤回を求め、闘争開始

【2】懲戒解雇に至る経緯
 甲板長は2年前にあらぬパワハラを理由に会社に呼び出され、戒告処分を受けました。
海員組合に苦情申立てを2回にわたり提出し、「聴聞会を撤回し、就業規則通り乗船させること」を要求しましたが、実現に至りませんでした。
 この3年で、4船120名の乗組員のうち、30名が中途退職しました。背景には船に対する会社側、とくに運航を統括する徳島本店の横暴な乗組員へのやり方があります。
 ある古株の船長と運航部長が、自分の派閥の乗組員を優遇する配乗を固定化していました。そのため、他船からは不満が噴出していましたが、誰も物申せない状況でした。
 これらが折り重なる中で、中途退職が多く、とくにベテランが次々に辞めていく事態になっていました。ところが、業務を統括する徳島本店は有効な手立てを出せません。さらにコロナでの欠員状態も重なり、危機感を持ちました。
 オーシャンでは、年に一度だけ乗組員が社長と面談する機会があります。2023年6月サロン会議の場です。いつもは船に来ることもない、築地の東京本社にいる高松勝三郎社長(現会長)に直接訴える機会でもあります。
 ここで勇気を奮って挙手、質問することで、事態は変わるのではないか・・・甲板長はそう思って、船員のみんなの期待を背負って挙手、発言しました。
 「退職者が続いている為、現場では運航に支障が出るのではと心配しています」と、意見しました。
 それだけの、短い質問でした。しかし、普段、現場での不満は徳島本店の運航部で握りつぶされ、本社へ伝わる事がありませんでした。それだけに、一大決心で社長に質問しました。
 しかし、その後の会社の対応で、甲板長は「処罰の対象者」とされてきました。
 社長はそれを部員の反乱とみたのかどうか、聴聞会という名の面接に呼び出され、苦情申立書の下書きを、事前に乗組員から入手しており、問いただしてくるという事態になりました。
 9月13日業務命令で呼び出され、高松会長をはじめ常務、部長など4人の会社幹部に会議室でとり囲まれて一方的に詰問されたのです。まさに、海員組合に乗組員の不満改善を求めた苦情申立書を提出しようと、準備していたところでした。
 その時の面接の最中、動悸が激しくなるなど体調不良になり、聴聞会は中断しました。
 甲板長だけではありません。会社の意に沿わないと、会議室に呼びだして取り囲んで詰問する。そんな面接を繰り返し、メンタルダウンさせるまでやる。そして会社を自主退社させる。これが会社の船員に対するやり方です。このメンタルダウンで、何人もの仲間が今もフラッシュバックや不眠で苦しんでいます。本当に許せません。
 東京本社からの業務命令では「自宅待機命令」「当社敷地内立ち入り禁止」「従業員との接触禁止」とのことでした。こんなものに、断じて屈するわけにはいきません。

【3】団体交渉
 面接の後、甲板長のかかりつけ医は、面接という特定の条件以外なら「乗船に問題はない」と診断していました。ところが、会社側は聴聞会が中断しているという理由にもならない理由で、乗船させません。会社側の面接をパスしないと、日常の船務につかせないなど、全く本末転倒しています。
 甲板長は2024年3月に再度、かかりつけ医から乗船できる診断書をもらい、会社の指示に従って産業医にも面接しました。それでも、会社は乗船を拒否してきます。どれだけ海員組合を通してやり合っても、どんどん譲歩に次ぐ譲歩があるだけでした。                          
 その為、翌4月3日海員組合に在籍したまま、徳島合同労組に加入し、会社との団体交渉に臨みました。
 現在まで2回の交渉を行い、3回目の交渉を申し入れましたが、会社側は拒否、労働委員会のあっせんも拒否してきました。

【4】解雇撤回、海上復帰の闘いへの思い
 分会長(甲板長)は「乗組員と、会社の体質を変えると約束しました」と団交でも会社側に宣言しました。辞める訳にはいきせん。
 いま、世界各地で戦争が起きている中、再び船員の戦争動員が狙われています。オーシャンでも、有事の際に避難住民の輸送に応じる計画との話を聞いております。
そ のための、会社にものが言えない、命令に服従する従順な船員作り。今回、分会長の身にかけられた懲戒解雇処分は、船員全員にかけられた攻撃でもあると思います。
 分会長は、解雇撤回裁判、労働委員会闘争、街頭宣伝などふくめ、必ず解雇撤回して船に戻る決意でいます。
 全国の羅針盤読者のみなさまの、ご支援を心からお願い申し上げます。
                                (2024年8月22日)

◆カンパ送り先
トクシマゴウドウロウドウクミアイ 
四国労働金庫 徳島支店 普通 762 4175160