ブラック企業の見分け方【心が欠乏の会社】

川原 陽(あきら) (元内航船員)

現状は、日本国そのものがブラック状態

 *ブラック企業の共通点は労働者にお金を支払いたくない。
 *大企業から零細企業までお金を追いかけている状態です。
 *特にブラック企業は儲かっていても、人権、尊厳無視で低賃金を推進する。
 *労働組合は人間の尊厳を重んじて行動する組織ですが、労働者無視で企業の尊厳に比重を置いた組織になり下がっております。
 憲法に国民の尊厳は尊重されると明記されております。
 雇用・社会福祉・震災復興・原発政策・農業政策・運輸などなどで、労働組合はブラック環境を与党政府と一体となり推進する立場で、政策提言をするなど、企業側に寄り添った行動を平然としております。
 国民が人間らしく普通の生活をしたいと願う…しかし邪魔する勢力が身近な所に存在しております。
 会社側は社員・船員を虫ケラ以下に扱っておりますから、会社を信用した貴方がバカだった…労組役員も飲ませ食わせするだけで、コントロール可能。
 日雇い労働者が船に乗って作業している程度の扱いです。
賃金・雇用・年金・契約・保険…すべてにおいて上から目線で、「ダウンストリートが贅沢言うな」のレベルです。

 以下のブラック企業例は組合船も非組合船も同じです(組合は会社の細かい所まで監視できないし、しようともしない)。
〇社会保険未加入
 法律で、法人の場合1名以上、個人事業所は5人以上社員を雇用すれば社会保険は強制加入です。会社は最寄りの年金事務所に報酬月額など規定の書類提出が求められます。
 雇用者が5人未満の個人船主も任意加入できます。その場合、従業員の同意書や3カ月以上の実績書類等が必要です。
 毎月の保険料は各種手当を含む月々の給料、ボーナス、通勤交通費等から算出されます。
年金事務所に聞いたところ、保険料を何年も滞納している会社が今ザラにあるそうです。その場合、給料から保険料が天引きされても年金は付かない扱いとのこと。自分の会社が滞納していないか要確認です。
※長崎県の某田舎の漁業会社の例
 従業員100名以上、給料から船員保険料は天引きされていたが保険証など支給されてないから皆さん国民保険を個人で掛けていた。
 結果、会社は保険すらかけていなかった…100%会社側詐欺行為ですが誰も告発しなかった。そのため10年以上乗船していたが年金は付きません。
※船員辞めて陸上でサラリーマン勤務の落とし穴
 総支給と基本給の違いを悪用。基本給7万円で総支給は40万円…年金保険料は基本給で届出。
結果、老後の年金は月支給10万円のみ。総支給計算なら25万円以上。この差は大きいです。
〇雇用契約書
 *サインした雇用契約書(本来は2枚作製し1枚を本人に渡す)を本人に渡さない。
 *雇用契約書の賃金額が、説明されたのと違う(これは書類上だけで実際には約束通り払うからと会社は言う)。
 *入社時の約束を手取り総額で決める会社(基本給、時間外手当、各種手当額を契約書に明示しない)。
世間で言う「丼ぶり勘定」。しかし社会保険と年金の支払い額を逆算して下さい。丼勘定する経営者はザッパで計算出来ない者が多いのが特徴です。
*雇用契約書に「就業規則による」と書いてあるが肝心の就業規則は見せない。
 就業規則の意味・義務すら理解できない船主が多々いますから注意。
*雇用契約書を乗船日に乗船してから書かせる(乗船させてしまえばこっちのもの)。
*運輸局の募集要項より給料額が低い(慣れたら給料UPすると言ってごまかす)
 会社が申請する時に運輸局職員が法的に詰めて突っ込まれたから嘘を記入するはめに。
〇入社時
 普通の会社は最初から正社員、たとえ試用期間を設けても、最初のボーナスは半額、2回目から全額支給するが…
 *入社日を乗船日にする(実際には待機期間があるのに給料にカウントされない)。
 *すぐ解雇できるよう試用期間を設ける。
 *試用期間はボーナス期間から外す。本来試用期間とは仕事が出来るか出来ないか…給料と試用期間は別物です。
 *乗船した後、試用期間を変な理屈を付けて延長する。
 給料減らす行為でブラック会社の得意技です。
〇誓約書や借用書を書かせる会社
 *社員の質向上等されると困る会社の特徴は、パチンコ、競艇、競馬、色街などを奨励。
  当然、給料以上に豪遊する社員を重宝しながら低賃金を維持できる。
 *会社あげて上級資格免許奨励する会社。職場環境はブラックでなくても、費用を社員負担あたり前にするなど、底辺で働かせる事を当然と思考しているブラックそのもの。
 業務上必要な資格・免許取得は常識的には会社負担ですが、費用を社員が負担する場合は手当で上乗せ、企業負担の場合は経費で落とせます。
 *会社の都合で免状を取らせたのに、3年務めなければ費用全額返すというような誓約書を書かせる。
 *業務上の必要から危険物講習に行かせたのに、2年務めなければ費用を全額返す誓約書を書かせる。
 *STCW講習費用を本人に出させる。もしくは、2年務めなければ費用全額返すという誓約書を書かせる。
 *会社への借金を勧める会社(パチンコ代とかを気前よく貸して借金があるうちは辞めさせない。返すまで長期乗船させる)。
 昔の炭鉱会社・漁業会社・土木会社・森林会社では借金を奨励し、花札・麻雀など賭けをさせていた。
 田舎の漁業会社では船小屋でシケの時に、飯炊きに嫁さん多数動員、麻雀に負けたら嫁さんを借金の代わりに別室で提供していた…長崎、離島 S50年頃まで。
〇入社時に説明を受けた内容と船の実態が違う
 *「楽な船」のはずが実際は積み揚げの連続、ピストン航海。
 *定員が少ない。もしくは欠員が多い。欠員手当は払わない。
 *その時の都合で他の職種もやらされる。
 *「初めてで分からないだろうから、丁寧に教えるよう船に言っておく」はずが、話が船に通っていない。
 *飯作りや掃除は交代制との説明が、新人と言う理由で何でもやらされる。
 *「和気あいあい」の雰囲気のはずが、実際はいがみ合い。
〇乗組員が居付かない会社
 船も陸の世界も大きい問題です。主な要因は一部社員が横柄な態度、バカな社員がのさばっている会社でよくあります。
 要はチンピラ崩れの社員を重宝すると、一気に雰囲気が崩れてブラックになります。
 *派遣船員が多い。派遣船員費は消費税法上消耗品と同じ扱いで経費を計上できるので、会社にとってありがたい存在です。
 *乗組員がすぐ辞めていく。常に運輸局に求人を出している。
  普通の田舎会社なら常に求人していたら恥ずかしいです、当然相手にしませんが…。
 *社員が数百名の会社でも、チンピラ崩れの管理職・社員が数名在籍していたら、真面目で仕事出来る社員から退社し、数年で会社は傾き、事業不能に陥ります。(海員組合も似たような環境と察します…反論大歓迎します)
 *OBや派遣の人ばかりで若い社員が少ない。
 ブラックを超えて先が無い会社はOBと派遣で辛うじて息を繋いでいる、自転車操業。
 *年金生活者を沢山雇っている(年金併給だからという理由で日当制の低い賃金)。職場環境は、「俺が居た会社は…」の過去自慢大会で自己満足、ブラックそのもの。
 *人をすぐクビにする。派遣の人の顔ぶれが毎回違う(人がいつかない)。会社は、「虫ケラ同士が」とコキ使いながら、意味不明の人格否定を煽る。
 *転船が多い派遣会社。短期の急な派遣の連続で儲ける。(急な派遣は5割増等と吹っ掛け可能)。
 *会社のビルもしくは近くに宿舎を設け、そこに寝泊まりさせる。住民票を置かせる会社もある(囲い込むため)。
 *一日幾らの臨時雇用で乗下船日を給料支払い期間に参入しない会社。
 *乗下船日を休暇期間に入れて計算する会社。
 *何時まで経っても下位職のままで昇進させない。
 *二航士で雇ってずっと一航士をさせる。安い執職手当でごまかす。
 *正社員で雇われたのに派遣に行かせたがる(儲かるから。船長の派遣は月120万が相場)。
 *シケなのに無理してでも航海するよう指示する会社。
 *船にスパイを置いて誰が何を言ったか常時監視する会社。
  どこの会社もスパイ行為を奨励。会社はお願いもしていないのに勝手に手土産代わりに状況報告?と言いながらスパイ行為…ダウンストリート環境に付き物です。
 *人が足りない時社長が乗ってくる会社(経費節減、船内監視)。社長に金は有っても、心がない船主が多数…海員学校の同窓会名簿を見て、やっぱりそうか?
 *社長訪船時、安い弁当や飲み代でごまかす。
  もっとブラックな会社は、文句は言うがお金と食事は舌すら出さない。
 *実際には乗船していないのに船員手帳上乗船したことにして、早く免状を取らせる。
〇就業規則
 *就業規則を船長が保管し乗組員が見られないようにする。
 *就業規則の労働者代表印を勝手に会社が押す。
〇給料明細
 *ブラックな会社は決算書など説明すらない…赤字と言いつつ赤字の原因、損益、経費、税務申告書類や、運送費、チャーター代など詳しい資料など見せない。
 *給料明細書を出さない。もしくは希望者のみに出す。
 *どんぶり勘定の明細書。給料総額のみを記載し、税金や保険料額の記載がない。
 *給料明細書の額の根拠が不明、特に時間外手当の単価と労働時間数が不明。
 *固定時間外手当時間を超えた分の時間外手当を払わない。
 *夜間割増手当を払わない。明細書に記載がない。
 *他の人の給料が分からないようにさせる。給料を他の人にしゃべらないよう箝口令を敷く。
 *乗組員の本給が書類上は全員同額になっている。
  本給が全員同額の会社は社会保険料を支払う時に支払額を少額にする行為です。
 *最低賃金をクリアしていない。
 *派遣船員経費の悪用。
 経理上、雇用船員の人件費に消費税は掛かからないが、派遣会社に払う経費は消費税込みなので、消耗品購入時に払った消費税と同じ扱い。納める消費税から差し引くことができるので、「節税」に悪用する会社がある。
〇休暇
 *ブラック会社に休暇、休日は縁遠い言葉ですが、強制順法で就業規則上は一応従っているフリをしている。
 *休暇日数の計算書を出さない(年度末や退職時の休暇残日数が不明でごまかされる)。
 *人により休暇付与日数が異なる(えこひいき)。
 *ローテンションが守られない。人を補充出来ないので長期乗船が常態化。
 *有給休暇中の食料金を払わない(有休中の食料金支払いは義務)。
 *有給休暇と陸上休暇を区別しいない会社。
〇陸上の会社:
 週休2日、正月・5月の連休・盆休み・秋の連休・有給休暇…合計年間約130日の休み。
〇船の世界:
 3ヶ月乗船、1ヶ月休み=年間合計90日の休み。組合船でも100日ちょっと…これ自体世間ではブラックそのもの。
 最低要求で2ヶ月乗船1ヶ月休みで年間122日…これでやっと陸上並みです。
 陸上でも社員不足…船の世界は陸上以上に休暇を出して当然です。
 政府・会社・労組は休暇に対し、助成処置を創設し、労組も政策制度設計を出して船員不足解消に努めるべきです。
〇船内記録簿(労務管理記録簿)
 *船内記録簿を会社が作って船に送り、ファイルさせる。
 *船が作った船内記録簿を会社が勝手に修正して船内ファイルさせる。
 *労働時間の線の引き方を、実際より少なくするよう船に指示する。
 *1日の労働時間が三分割以上の場合は、線の引き方を船員法に合うよう改ざんさせる。
 *食料買い出しを労働時間に入れさせない。
 *船内掃除や全員の分の飯炊き時間を労働時間に入れさせない。
 *待機時間を労働時間に入れさせない。
 *5分、10分の短時間の点検や書類作業を労働時間に入れさせない。
〇食料金や整備費
 *組合基準より安い食料金(1450円より低い会社は要注意)
 *交代日の食料金を一人分にする(下船者は下船日の食料金をナシにする)
 *洗剤等の必要消耗品を本人持ちにする。
 *ドックの修理費・整備費をケチるため、必要な整備作業をカットする。
 *部品を送ってこず、船で再生して使えと言う。
 *下船日に夕方まで作業させる(作業着を洗濯できない。乾かない)
 *仮バース、沖待ち日にも作業を細かく指示する。
 *雨や風の日もペン塗りさせる。
〇船員保険料
 *標準報酬を実際の給料より少なく申告して船員保険の保険料を安くする(将来貰える年金額が減る)。
 標準報酬の計算法を知って、自分の給料明細を見て計算しよう!
〇源泉徴収票
 *年末調整の源泉徴収票を会社任せで送ってこない。
 *源泉徴収票の記載額と実際の給料が異なる(税金や保険料のごまかし?)。
〇退職時
 *船員手帳の雇止め欄に「有給休暇」や「陸上休暇」と書かないで「本人都合」「本人申し出」と書いて下船交通費を払わないようにする。
 *給料を少なく抑えるため、休暇が残っているのに計算せず、下船日の翌日で退職させる。
 *休暇が残っているのに月末の一日前で退職させて、その月の保険料(船員保険・厚生年金保険)を逃れる。(会社は月末在籍者の保険料を支払う義務がある)
〇乗下船の交通費
 *新幹線は自由席と指示する会社(予約できないため満員の場合あり)。
 *極力タクシーを使わせないよう、公共バス移動を指示する。
 *ホテルは安い所を会社が予約する。
 *乗船者は朝早く家を出発させ、下船者はその日のうちに帰宅するよう指示する。
 *キャンセル出来ないLCCの安い飛行機を会社が予約。
〇退職後
 *離職票を送ってこない。
 *会社都合なのに離職票に「本人都合」「本人申し出」と書く(失業保険に響くので職安に申し出るべし)。
〇航海日当
 組合船は航海日当があるので、以下は非組合船の話。
 *航海日当がない会社は乗組員思いじゃない会社(航海日当は非課税なので、手取り総額は同じでも航海日当分少ない所得になるので、その分所得税と住民税が安くなる)。
 船主団体内労協と全内航の乗組員の航海日当は平均でひと月約22900円。年間27万4800円も 所得が減るので税金がかなり安くなる。
 航海日当制度を設けるよう会社に要求しよう!

 以下は、元船員で会社経営者の私の目から見た感想です。


〈内航船員の現実〉
 内航船員は、雇用や安定生活、将来の展望など皆無な状態に置かれており、労組を含めて頼る場所がない状態です。
 内航船は陸上の会社員が長期出張している時の、現場迄の交通費・宿泊代・日当など組合のない企業でも支給している手当を参考にすべきです。全て経費で落とせるハズで、特別に特等席に乗船・乗車、高いホテルなど使用しない限り、経営側はケチル理由は無いと察します。
 現実は、船主側の船員を安上がりに使用する魂胆が見え見えで、沖の船員を代弁する組合が、船主の言い分を優先した結果、ブラック会社が蔓延し、のさばった船主が海運業界を仕切る状態になったのではないでしょうか。

〈船員自身の組織を!〉
 元請け企業には、運賃、用船料などの収入、燃料費、店費、人件費などの経費を、正直に提出をお願いしたい。そして、問題点を明らかにして元請け企業と突っ込んだ経営討論をして、海運業の発展に貢献できる人材。既存労組に頼る行為を止めて自ら勉強し、職場改善と人間らしい環境を構築する船員自身による組織が望まれております。
 陸上会社の職場は、販売現場はノルマ、事務職現場でもコスト削減のノルマ=サービス残業、機械メーカーでも代理店へのノルマ。達成できない時は代理店社員と一緒に販売し、サービス残業と休日無しの連続です。
 建設土木現場では、今週中に終わらせる為に、夜中まで残業させられ、手当は元受けの下請けイジメで出せないなど最悪の労働環境もあります。
 元請けから、人件費と食費と残業代は定額=毎月込みで××万円に抑えろと言われ(コスト削減ノルマ)、黙って従う下請け経営者のなんと多いことか。仕事の仕方次第で改善できる事など思いも付かないのです。
 船の世界でも、下請けイジメが横行して、横柄に使われている船会社が多数と察しますが、早く改善しないと海運業界全体が沈没する状態になると思います。皆様はどう思いますか?