国側は法廷に現れず(オンライン出席)

 2020年3月に高知で提訴された裁判は、労災訴訟は被告である健保協会船員保険部が東京にあるという理由で東京地裁で、国家補償請求訴訟は高知地裁に分離され行われて来た。

労災認定訴訟(東京)
 昨年9月に第三回口頭弁論が開かれて以来、非公開の進行協議や書面提出が続いていたが、去る5月14日、第4回口頭弁論が東京地裁で開かれた。 
 公開のため多数の傍聴者が見つめる中、国側の席は空席(オンライン出席)という異常な形となった。今年3月の民事訴訟法改正でWEB裁判が認められ実出席不要とされたためだ。
原告の船員側弁護士は、本件を始め、核被災に対し国側が取り続けている内部被ばく軽視を批判。本件は核爆発による光が直接体を射抜いた初期被爆と異なり、放射性物質の降下による内部被ばくであり、国側の放射線量基準100ミリシーベルト適用論の誤りを指摘した。
 また、軍事機密により被爆の実相が隠されて来た経緯、原告の体から高い被爆線量が認められた専門家の調査内容を述べた。
 次回も進行協議が予定され、そこで被告国側が反論書の提出日を示すことで、次回弁論日が決まる模様。

国家補償請求裁判(高知)
 5月24日、高知地裁で第8回口頭弁論が開かれた。
 原告側は、「被爆による健康被害や発症には潜伏期間があり、核実験直後の1955年の日米合意から除斥期間が始まるとの国の主張は乗組員にとって著しく酷で、認められるべきでない」、「発症は日本に帰国した後で、アメリカの法律でなく日本の民法を適用すべき」と国側の主張に反論した。次回は  国側の反論書提出が予想され、今後も書面合戦が続く模様である。
 国側は当初から事実関係の解明に入ろうとせず、「政府間で解決した日米合意以来20年を超え、除斥期間が過ぎている」、「そもそも国家賠償を求める法律上の根拠がない」という法律論で門前払い判決を企んでいる。

〈報道から〉
〇NHKクローズアップ現代
 NHKは1年かけて百人近い被爆船員と関係者を取材。6月21日の「おはよう日本」でビキニ訴訟を取り上げたのに続き、7月17日に「隠された被ばく者、ビキニ事件70年・救済巡る闘い」を特集。高知県の幡多高校生ゼミナール等を通じてビキニ被災船員に寄り添って来た元社会科教師山下正寿さんと、訴訟に立ち上がった漁船員・遺族の闘いを追った。
 後半は実際に第五福竜丸の被災船員と交流を重ね、幡多高校も訪れるなど長年原水爆禁止運動を支えて来た女優・吉永小百合さんのロングインタビュー。「核兵器とか核に関するものに対してあいまいになっていくことの恐ろしさ」「よその国が攻めてくるかもしれないから兵器を買いましょうという風潮」への不安、「私たちが行動していくことの大切さを忘れてはいけない」等と語った。(太平洋核被災センターホームページのトピックス7月20日に全文。YOU TUBE等で一部視聴可能)

〇WEB版「世界のヒバクシャ」
 1989年に連載された中國新聞の取材を基にしたドキュメント。アメリカ、ソ連を筆頭に日本・韓国などアジア、ヨーロッパ、南米、アフリカに至る世界各国の核被災を網羅している。
https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?post_type=exposure
(編集部)