【訃報】片岡和夫さん
 海員組合の元副組合長片岡和夫さんが去る2月4日心不全のため急逝された。享年83才。
 氏は佐賀県嬉野温泉で5人兄弟の3番目として出生。進学校・佐賀高校に入学するが船員を志して中退し、門司海員学校に。卒業後、専売公社の塩輸送を行う日本塩回送に甲板員として入社、部員の権利・労働条件獲得のため発足した船舶部員協会に共感して入会。以来海上労働運動の道を歩む。
 通信士の三直制廃止を決めた67年(昭和42年)の組合全国大会で「現場代表にもっと発言の機会を与えろ。組合幹部の姿勢は保守政党と同じ、現場の血を吸う吸血鬼だ」の発言は有名。その後東京海事(後に合併して海栄船舶)に移り甲板手として乗船した後、78年職場委員に。
 復船した後の82年組合執行部員となり、近代化対策室、船員雇用事業センターを経て92年に中央執行委員に当選し総務局長を務める。2000年に副組合長となり組合を2分した役員選挙戦・内部混乱のただ中の04年大会で引退した。
 当事の役員として、また、執行部員の後継者難を打開するため海上技術部員制度の確立に尽力し、技術部員の育ての親とも言える存在だっただけに、その後続いた数々の報復人事や裁判等の組合の紛糾に責任を感じ、「本当に申し訳ない」と忸怩たる思いを覗かせていた。
 独力で海技免状取得のため勉強し、当直中も英語の辞書を肌身離さない勉強家だった。海員誌の私が読みたい一冊に反面教師として日経連発行「新時代の日本的経営」を挙げ、雇用流動化、非正規化の流れを批判した。
 組合執行部員になった後も、船舶部員協会、海上労働ネットワークに共鳴し、羅針盤発足以来の会員として編集部に参加。創刊号ではK生、その後は山村健介を筆名とした。大田区の多摩川とびはぜクラブ代表、海の平和問題懇談会会員、昨年から戦没船を記録する会の会長を務めていた。合掌

(編集部、竹中)


編 集 後 記


○「もしトラ」と米国の大統領選が注目される。トランプとバイデンの再対決。ロシアにどう立ち向かうかなど、今後の世界の帰趨に大きな影響を与える。国のリーダーが変わることで期待が持てるならよいが、何を仕出かすかだ。世界の難題をさらに難題化させないよう望む。(L)
○故片岡和夫さんは、青年期には真の組合民主化を求めて闘い、組合幹部になってからは争いごとを収めようと努力した「中庸の人」であった。時には誤解されることもあったが、その温厚な人柄を慕う人は多く、私もお世話になった者の一人として心からご冥福をお祈りしたい。(Y)
○商船三井クルーズの労働時間記録の組織的改ざんには驚愕した。実際に船員に時間外手当が支払われていたか否かが問題の核心だ。(J)
○3月6日、ハマスに連帯するフーシによって商船が攻撃を受け、3名の命が奪われた。フーシは許せないと言えば、イスラエルを擁護するのかと反論が出そうだ。だが、戦争とは紛れもない殺し合いだ。平和がなければ船員という職業は成り立たないことを思い知る。(I)
○森田前組合長の6億円横領事件。昨年秋の組合大会で代議員に対し、「新たな事実が判明すれば皆さんに報告する」と役員は答えたが、未だに何の報告もない。事件発生から既に2年半、組合員の疑問に何ら答えず、ひたすら隠ぺいに終始する。この状態を許しておいて良いのか。(T)
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羅針盤 第42号  2024年3月20日発行
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