堀内靖裕(やすひろ)(海員組合元執行部員)

はじめに
 もう労働運動から20数年遠ざかってしまった。数十年前ごろから、船員労働運動の質的低下が始まり、その内容は加速されてきたように思う。指導層の権力闘争や権力に固執した姿を見ると、全く船員のことを考えていなく、自己保身に終始しているようにしか見えない。特に近年の全日本海員組合の活動は全く現場の船員から遊離しているといえる。
 一方、船員労働の現場労働内容は決して改善されていなく、現場は放置されているように見える。
現場の船員は全日本海員組合にまつたく信頼を寄せておらず、自分で自分を守るしかない状態ではないか。


船員労働運動の歴史に学ぶ
 このような現状に接するとき、往年の海員組合の活動が思い出されて仕方がない。
戦前、終戦後の船員は過酷な状況に置かれていた。そこに発生した労働運動は情熱に満ちたもので、リーダーは使命感に燃え、連帯と友愛の精神に満ち溢れていた。中には私財を投げ打って運動にかかわった偉大な先輩たちも多くいた。
 また、近年の活動でも、長期ストライキにより勝ち取った人間性回復の闘争は記憶に残る感動の活動であった。
 このような過去を思い起こし、今一度歴史に学び、船員労働運動を建て直せないだろうか。
当時の状況と現在では社会情勢も異なるので、昔のような活動は出来ないかもしれないが、その精神は全く変わっていないと思う。


すべては現場から始まる
 その活動は、すべて現場から始まる。現場の船員の実情を把握し、船員の声を聞いて、その中から連帯の活動に繋げていくことにつきる。
 現場をないがしろにした労働運動などありえないと思う。
 海員組合在職中には、訪船活動、予備員集会、労働学校など、現場と接する機会が多くあったし、また、努めて現場に足を運ぶことに心がけていた。
 組合未加入船員の組合加入を呼びかける活動はまさに心を開いたお互いの信頼に基づくものであった。目的を達したときは大いに感激し、お互いに心が満たされる時でもあった。


現在の労働組合は本当に役に立っているだろうか
 労働組合の成熟?した現在、その活動は現場労働者の役に立っているだろうか。既定路線による一定の効果はあるにしても、その活動は現場に立脚したものではなく、既定路線の繰り返し、組織の維持を行っているに過ぎない。組合員のための活動よりも組織維持の活動に重点が置かれている。
 しかも、その労働組合は大企業、大組織の恵まれた者の活動であって、本当に労働組合が必要な抑圧された労働者には手が届いていない。
 このような現状は陸上一般の労働組合のみならず船員の労働組合としての全日本海員組合も同じである。
 現状の活動内容を変えない限り、本当の労働運動にはなりえない。


新たな取り組み
 海員組合退職後、前記のような考えを持ち続けていたが、高齢化と地方在住から、もう船員労働運動はできないと思っていた。現場から遠ざかっている今は、船員労働について発言する資格もないと半ばあきらめていた。
 ところが昨年末スマートフォンを購入し使ってみるとその内容の豊富さと使い勝手の良さには驚かされた。
 いままで、パソコンをある程度使えたのでスマホなど必要ないと考えていた。しかし、スマホはパソコンと全く別物である。
 パソコンでつながる情報処理はホームページであるが、ホームページは組織からの発信が主体で、受け取った個人はそれを見て判断する受動的なもので、個人とつながることは希薄である。
 ところがスマホのSNSはむしろ個人が情報を発信する機能が豊富で、参加型であり、仲間とつながることが容易である。
 ここで気づいたのは「訪船活動」を「SNS上で行う」ことである。これなら高齢者で地方在住の私でも時間さえあればネット上で「訪船」することが出来ると考えた。
 その活動は「船員労働運動」というより「船員のコミュニティーに参加する」ということかもしれない。
 まだ入り口に立ったばかりで、未知の世界に踏み込んだような気持である。SNSを始めて1か月、X(旧Twitter)、Facebook、YouTube、Instagram、TikTokで訪船(検索)してみた。それぞれの特色はあるが、とりあえずXが一番使いやすい。また、私の投稿は文字が主体なので、XとFacebookで行っている。こちらからのアプローチは幾分できたが、反応を得るところまでには至っていない。
 莫大な情報を処理する必要があり、時間と手間が必要である。
 船内にある問題点が明らかになり、その問題点をどのように解決するか、行動をどう起こすか、などについては、それぞれ専門的な知識も必要になる。
 また、組織的につながった行動はどのような方法で出来るか、技術的な知識も必要である。どこまで出来るかまだ見通しは立っていないが出来るところまでやってみるしかないと思っている。
 私のページはすべて実名で行っています。投稿内容やページを閲覧してご理解いただき、ぜひともご賛同・ご協力をお願いできればと思っています。(2024年 正月)
高知県の田舎において

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