参議院の国会質疑から(編集部)

 外国人実習生の問題について、山本太郎議員は国会でたびたび取り上げてきた。

 今年5月21日、参議院文教科学委員会で同議員は15分間にわたり、広島のカキ養殖など漁業実習生の実例を挙げ、海員組合を「やくざな組織」等と糾弾。各省庁は実態を調査・確認すると答弁した。

以下同議員の公式ホームページ「国会活動」の議事録から抜粋して報告する。(ニコニコ動画、YouTube等で視聴可能)

『労働組合選択の自由を保障』

○山本議員
 技能実習生に関わることについてお聞きしたい。入国後の講習において、技能実習生らに労働法などについて研修は行っていますか。労働組合加入の権利について知らされているでしょうか。

○大口善徳厚生労働副大臣
  労働者には憲法28条に基づく労働基本権を保障されておりますので、労働組合法では、労働組合を結成したり、労働組合に加入して活動することは当然の権利と解されております。また、どのような労働組合を結成するか、どのような労働組合に加入するか、また加入しないかは労働者の自由であると考えております。

○山本議員
 技能実習生らの労働組合加入の実態は把握されていますか。

○大口善徳厚生労働副大臣
 労働組合員数が1007万人、そして組織率は17%という程度の把握しかしておりませんので、外国人労働者について特に把握はしておりません。

○山本議員
 では、技能実習生らに労働組合の選択の自由、これ保障されているということでいいんですよね。

○大口善徳厚生労働副大臣
 憲法上認められていることでありまして、選択の自由があります

○丸山秀治政府参考人
 厚生労働副大臣から御説明ございましたとおり、技能実習、特定技能の方たちも加入できる権利というものがあるというふうに法務省としては認識しています。

○山本議員
 技能実習生らに労働組合選択の自由というのは保障されていますということですね。農水の方にもお聞きしていいですか、文科も。

○高鳥修一農林水産副大臣
選択の自由があると理解しております。

○柴山昌彦文部科学大臣
 同じ認識でございます。

『実質的に全員が海員組合』
○山本議員
 当然ですよね。日本人と同じ、同じような処遇で働けるわけだから、当然憲法上に沿った労働者の自由というものがあるということをお認め頂いたと思います。技能実習生、漁業という分野におきましては、100%労働組合に加入していると聞きました。全てが全日本海員組合、通称全日海に加入していると聞いています。間違いありませんか。

○高鳥修一農林水産副大臣
 漁業分野の技能実習制度におきましては、監理団体が労働組合と協議し、技能実習生の労働時間、休日、休憩その他の待遇を定めるといたしております。労働組合の加入を直接要件とするものではございませんが、在留している漁業分野の技能実習生は、実質的に全て全日本海員組合等の労働組合に加入していると存じます。

○山本議員
 全日海、該当する外国人の加入数ってどれぐらいでしょうか。

○高鳥修一農林水産副大臣
 労働組合別に加入をしている技能実習生の人数の集計はいたしておりませんが、平成29年時点で約2800が漁業分野の技能実習生として在留いたしております。

○山本議員
  この漁業分野、特定技能での増加人数の見込みとか見通しというのはあるんでしょうか。

○高鳥修一農林水産副大臣
 漁業分野の技能実習生は、平成27年の約2100名から平成29年は約2800名となり、3年間で3割増加しております。今後も増加していくと考えております。

○山本議員
 漁業分野も人手が足りなくて非常に助かっている、外国の方々の数が増えている状況だと思います。
先ほど、実習生にも労働組合の選択の自由は保障されるというお答えを頂きました。当然のことだと思います。強制的ではないというお話でしたけれども、ほぼ100%に近い形で全日海に入っている。もし全日海とは違う労働組合に入ったとした場合に、実習生、不利益を被るようなことはないですよね。ないならばないとはっきりとお答え頂きたいんです。

○森健政府参考人
  制度上、労働組合として全日本海員組合に限定されているわけではございません。協議会の決定に基づき他の労働組合と実習生の待遇を決めている事例もあります。

○山本議員
 お答え頂いてないですね。じゃ、副大臣にお答え頂きましょうか。
実際は。そうは言ったとしても、そのほとんどが全日海に属しているわけです。そこから違う労働組合を選択した場合に、この実習生に対して不利益が生じるってことはないですよね。ないと言い切って頂きたいんですよ。

(山本議員が国会で示した図)

○高鳥修一農林水産副大臣
 そのような不利益はないと存じます。

『脱退したら受験できない』
○山本議員

  ありがとうございます。でも、残念ながら不利益を被った実習生がいるというお話をこれからしてまいりたいと思います。法務省にお伺いしたいんですけれども、2016年、広島、地域のユニオンに加入したところ、技能検定試験、これ、受験させないという事例があったというふうに聞いているんですけれども、この事例について御存じか御存じでしょうか、

○丸山秀治政府参考人
 突然の御質問でして、ちょっと現時点で把握してございません。

○山本議員
 恐らく技能実習に関わっている人間ならこのことは御存じであろうと。内容を簡単に説明します。
 漁業関係の、養殖業も含めて技能実習生は全員入国時に全日本海員組合に強制的に加入させられる。それが入国の条件になっているんでしょう。2016年、広島で一つの事業体の技能実習生が地域のひろしま・スクラムユニオンに加盟した。何が起きたかというと、全日海の組合を脱退したら技能実習検定試験を受けることができないと。こういうことはあってはならないと私は思っています。皆さんもこういうことはあってはならないというお気持ちですよね。いかがでしょうか。

○平口洋法務副大臣
  あってはならないと思います。

○大口善徳厚生労働副大臣
  個別の事例についてはお答えできないんですけれども、あってはならないことだとは思いますね。

○高鳥修一農林水産副大臣
  確認する必要があるとは思いますけれども、基本的にはあってはならないと思います。

『全日海、何もしてくれない』
○山本議員

 一般論としてそのようなことがあってはならない、当然のことだと思います。でも、それがあった。養殖業を含めた漁業関係において、技能実習生は全員労働組合員であると。労働組合に加入していないと入国できないような仕組みになっている。いわゆるクローズドショップというような状態です。
 水産庁管轄の技能実習生や特定技能に関して全日海への加入が条件になり、組合費を払う必要が生まれる。実際は実習実施者や企業や受入れ側が監理団体を通じて支払う構造ですけど、外国人の皆さん、一人当たり毎月3千円天引される。旧制度においての数字ですけれども、最低賃金から考えても、毎月3千円って重い負担ですよね。実習生の母国での毎月3千円と考えると、これは大変価値の高い金額とも言える。
 事業協議会と地域協議会をつくって、そこに労働組合も参加することで健全化、適正化が図られていくというふうに考えるならば、これ、構造的にはこの全日海が労働組合としてちゃんと機能していれば問題ではないように思えます。でも、実際上は何もしていないといいます。実習生が問題抱えた際に駆け込む先はどこか。外国人技能実習生を支援する団体や地域のユニオンなのだと支援団体の方々はおっしゃっています。
 そもそも、技能実習生には全日海の組合員であることの説明もないと、何の集まりもないし周知もない、そのように実習生の方々はおっしゃる。彼らを守るはずの全日海、結局、何かあっても実際何もしてくれない。

『やくざな組織 実習生を独占』
○山本議員

 例えば廿日市市にあるカキの養殖業を営む丸羽水産、羽釜水産の事案。共に家族経営の会社。登記上は父親と息子がそれぞれ代表者となっている。羽釜水産は、実習生に朝7時から午後4時まで所定労働をさせた後、今度は、それまで羽釜水産の班長として指揮を執っていた息子、羽釜敏美の会社、丸羽水産の下で海に入れて、カキに付いた貝殻などを取る作業をさせていた。1日平均3時間ほどの残業状態だったけれども、別会社の仕事だから残業ではないという理屈。だから、割増し賃金どころか最低賃金分しか払っていない。土曜日の労働、日曜日の労働も割増し賃金付かず、最低賃金での支払であったと。都合よく外国人こき使っていたという話ですよ。
 そもそも実習生は複数の事業所に所属することができない。過重労働に苦しむ実習生、スクラムユニオン・ひろしまに相談。そして、羽釜水産と団体交渉を申し出たら、本来は団体交渉の相手ではないはずだけど、父親じゃ分からないということで丸羽水産が出てきた。その後、裁判になり、最終的には自分たちの過失は認めないが金銭払って示談ということで、被害者はそれを受け入れた。
 この件についても、最初から最後まで全日海は何一つ苦しむ実習生を助けることなく無視、放置。全日海が労働組合として機能していれば、事前に違法労働の実態を把握することができたでしょう。受入れ企業に対して是正勧告できたはずですよ。労働協約の締結を結んで労組がちゃんと機能するのであれば、監理団体がけしからぬことをしていても、適正化しないと協約を結ばないぞ、破棄するぞというふうに改善を求められるはずなんですね。そうなれば、新たな働き手も入れられなくなるなというふうな危機感を持つわけですから、技能実習生を保護させる、改善を行うという方向に行くわけですよね。本来は、それが技能実習生などと関わる労働組合の目的のはずなんですよ。
  全日海では、実際上そういうことを全くしない。ひどい労働環境に実習生がさらされていないかと職場回ってくることもない。そんな状態の中で、どうして毎月3千円引かれるんですかって。一人当たり年間3万6千円。技能実習生にしたら結構大きな額で、そんな、余りにも理不尽じゃないかという話ですよね、何の意味があるんですかという。そういう不平不満が現場でも出ているという話です。
 先ほどの広島に戻りますね。一つの事業体の技能実習生が地域のひろしま・スクラムユニオンに加盟した。要は、全日海を脱退したわけなんですけど、その後、彼ら、技能検定試験、受けることができなくなったんですよ。ユニオンが、おかしいということで闘ったらしいんですけれども、地元の漁協とか協議会とか、全日海には逆らえないと、もうみんなびびっちゃって、そこから先に進まない。
 ほかにもあります。最近、北海道であったそうです。ある監理団体、全日海の運営に不信を抱いて全日海と摩擦を起こした。全日海は、その後、その監理団体と労働協約結ばないということにした。そうなったらどうなるか。監理団体は、今いる実習生たちの期間の更新もできない。全日海は、今いる技能実習生はほかの別の監理団体に移せ、そうでないと技能検定試験受けられないと圧力を掛けているといいます。余りにもやり過ぎじゃないですかね、これ。労働組合という看板を借りながら、やっていることが余りにもやくざ過ぎる、私、そう思うんですね。
 技能実習生であったり特定技能ということを考えたときに、制度として十分でない、立法のときにも全く中身が詰まっていなかった状態だし。ある意味、制度として十分でないものを運用している、そう考えた場合に、職場において人権侵害、これ十分に防げないということを考えなきゃならない。そのような中で、労組は本人が選ぶ自由が担保されて当然の話でもあるし、それを実行した場合に圧力が掛かるなど言語道断だと。
 これ、全日海、圧力を掛け続ける理由は何だということなんですよ。利権構造を壊されたくないというシンプルな話でしかないんじゃないですか。自由に移動していいよとなったら、自分たちの取り分減るじゃないですか。先ほどお伝えした技能実習生などで全日海に所属している数、2759人。大臣、2800人ぐらいとおっしゃってくれはりました。そんなに違いはないと思います。
私の元々の数字、2759人で計算すると、一人毎月3千円で1か月828万円。年間で9932万円。労働組合としての役割ほぼ果たさずに、別の組合に変更するなどした際に数々の圧力で潰しに掛かるような者たちが、技能実習生から毎月3千円巻き上げて年間1億円近く懐に入れる。こんなこと許されていいんですかね。
 この技能実習、今のテーマに関して関わりのある省庁の政務にお聞きしたい。もう言葉選ばずに言いますよ。こんなやくざな組織が漁業に関わる実習生を独占している、これ問題ないと考えるんですか。指導しないんですか。もう一つ、これ調査必要ですよ、やってくれませんか。いかがでしょう。

○平口洋法務副大臣
 議員のおっしゃったことが事実かどうか、調査してみたいと思います。

○大口善徳厚生労働副大臣
 個々の労働組合について、これは関係労働法令に違反しているかどうか、確認をしていきたいと思っています。

○高鳥修一農林水産副大臣
 事実関係をしっかり調査をまずさせていただきたいと思います。

○山本議員
 是非調査をして頂きたいと思います。企業間の移動の自由がないということが技能実習生の奴隷労働構造につながっているわけですよね。同様に、労働組合選択の自由がないということが腐敗構造をつくり出している。ほかの組合とのいい意味での競合が絶対的に必要であろうというふうに思います。企業においても組合においても、実習生の選択の自由を確保することが最も重要なことであると最後に申し上げたいと思います。

編集部注:
 この件について海員組合は、今日現在、何ら論評していないが、的確な反論を期待する。
 ほかに広島県で強制帰国させられたインドネシア人のカキ養殖実習生が地域ユニオンに駆け込み、今年5月雇用主のマルコ水産と監理団体に対して賃金と慰謝料計700万円を請求して裁判を起こしたことがNHK等で報道された。当該実習生は、地域ユニオンから脱退する誓約書を監理団体に書かされ、広島県労働委員会で不当労働行為審査も進行中である。
(7・1 編集部)