— 裁判の経過と組合員の思い 25 — 

内航組合員 竹中 正陽(まさはる)

◯石川県労委が命令
またも海員組合を断罪
海員労組(北山等組合長)が石川県労働委員会に不当労働行為の救済申し立てを行っていた件で、昨年12月5日、石川県労委は海員組合の不当労働行為を認定し、謝罪文を出すよう命じた。
海員組合では、近年多数の元執行部員が65歳を過ぎても継続雇用されてきたが、海員労組の組合員(元執行部員)に対しては65歳もしくはそれ以前でも、更新拒絶、賃金切り下げや遠方への配置転換が行われてきた。こうした状況について、海員労組は団体交渉等において度々説明や改善を求めてきたが、海員組合が実態や採用条件の説明を拒否してきた。
今回の命令は、鈴木順三総務局長等が取った不誠実な対応が団交拒否の不当労働行為に当たるとされたもの。海員組合は命令に従わず、中労委に再審査を申し立てた。命令された謝罪文は以下の通り。

全日本海員組従業員労働組合
代表者組合長 北山 等殿

全日本海員組合
代表者組合長 森田 保己
当組合と貴組合との間で平成29年1月24日、同年2月21日、同年4月17日、同年5月22日及び同年6月21日に行われた団体交渉について、団体交渉事項「再雇用契約または継続雇用契約によらない定年後の雇用形態について、その採用の条件及び労働条件の説明」のうち、採用の条件の説明に係る当組合の対応が、石川県労働委員会において労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認定されました。
今後、このような不当労働行為
を繰り返さないようにします。

(注)労働組合法第7条
第七条  使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一、労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
二 、使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
三 、労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
四(略)

◯最高裁が海員組合の申立を却下
森田組合長・田中副組合長らの不法行為が確定
 組合長である北山元中執が、不当に再雇用を拒否されたことにより損害を受けたとして海員労組が訴えていた裁判で、1月17日最高裁は上告受理申立てを却下した。
 この結果、昨年7月に出された高裁判決通り、森田保己組合長と田中伸一副組合長個人、および組織としての海員組合が、海員労組の弱体化を狙って組合長である北山氏の再雇用を拒否した不法行為が確定した。(労組法7条1号3号の不当労働行為。地裁・高裁判決については本誌25・26号参照)
 この決定が重要なことは、組織としての海員組合だけでなく、森田組合長と田中副組合長が個人としても不法行為を働いたことを最高裁が認めたことだ。
 森田・田中両君は自分の財布から賠償金を払うだけでなく、最高裁に上告したことにより組合に余分な訴訟費用・弁護士費用を生じさせ、海員組合の名前にも泥を塗ったことの謝罪・弁償を組合と組合員にしなければならない。
 また、海員労組に対しても、これまでの度重なる不法行為を謝罪して、誠実に団体交渉に応じなければならないはずだ。

◯大倉元執行部員の裁判 
高裁も大倉氏が勝利

大倉実元執行部員(元関西地方支部副支部長)が、定年後の再雇用として勤務していた博多海員会館時代に、一方的な労働条件の不利益変更(月例給与減額や年間臨手に相当する期末手当廃止)の回復=バックペイ支払いを求めていた裁判の高裁判決が1月24日に出され、地裁に続き大倉氏が勝利した。
昨年5月に東京地裁は、海員組合が平成24年に従来の再雇用職員規定を廃止して一方的に新設した「継続雇用職員規定」を労働契約法7条・12条違反と判定。再雇用職員に対して全員一律に期末手当を支払うべきと認定し、大倉氏に対して総額約400万円を支払うよう命じていた(本誌25号)。
  高裁判決は、海員組合の新規定について「労働契約法10条にいう合理性があるとは認めることはできない。」とも断じ、違法性を強調した。また、遅延利子についても地裁判決と同様に、通常の裁判で課せられる5%(民法404条)ではなく、より高い方の利子である賃金確定法6条の14・6%が認められた。
これに対し海員組合は、命じられた金額を大倉氏に支払う一方で、判決を不服として最高裁に上訴したとのことである。
 しかし、この判決の重要な点は、単に大倉氏への期末手当支払を命じたに止まらず、新設された「継続雇用職員規定」自体を違法として、従来通り「全員一律に支払うべき」と規範を示した点にある。
 このような判決が出された以上、労働組合としてすべきことは、判決の主旨に従い、特定の再雇用職員に対して期末手当を支給し、他の再雇用職員に対しては支給しないという差別・選別政策を改め、該当者全員に対して、過去に遡って期末手当を支給することが先決ではないのか。
 船主が組合員に対してこのような差別を行った場合、かつての海員組合は、苦情等を申し立てた組合員だけでなく、その会社の全組合員に対して遡及して是正させてきた。それが産別組織としての対応だったはずだが、そのような矜持は何処へ行ってしまったのだろうか。

◯東京都労働委員会、証人尋問へ
海員組合が井出本元組合長の出廷を拒否
 
 海員労組が、北山・大倉組合員らに対する差別行為の是正を求めて申し立てていた件の、第7回調査が3月6日に行われ、証人が決定した。
海員労組側は、現体制が行っている人事が、従来海員組合で行われていたものとは全く異質な、不公平・不平等極まりないものであることを証明するため、井出本榮元組合長を証人申請した。
しかし、海員組合が井出本元組合長の出廷を頑なに拒否したため、証人は次の3名に絞られた格好だ。
審査はいよいよ大詰めを迎えることになる。

 
◯証人調べ5月17日(金)
午前10時半:大倉実元執行部員、
午後の部(13時過ぎ開始見込み)北山等元中執、鈴木順三総務局長。
場所:東京都庁第一本庁舎南塔38階審問室(傍聴自由)

その他の日程
◯中労委第1回調査(石川県地労委命令の再審査)
5月28日(火)16時、港区芝の 
労働委員会会館
他に、いずれも海員労組が海員組合の不当労働行為を訴えた件で、中労委の命令待ちが2件ある。


(次号に続く)