ー裁判の経過と組合員の思い19ー
昨年10月以降の経過について報告する。
◯海員労組による損害賠償請求裁判(団交拒否)
組合と田中副組合長の共同不法行為が確定
田中伸一副組合長が陣頭指揮した団体交渉が、石川県労委と中労委から不当労働行為と認定された件について、被害を受けた海員従業員労組(海員労組)は、裁判所に損害賠償請求を行っていた。
昨年9月30日、東京地裁は従業員労組の請求を認め、海員組合と田中伸一副組合長に対し、共同して33万円の慰謝料を支払うよう命じた(詳細は前号)。裁判所が田中副組合長の不法行為を認定したのは初めてのことだ。
これに対し、海員組合と田中副組合長は東京高裁に控訴し、争う姿勢を見せていたが、11月下旬に
至って、突如控訴を取り下げたため、一審地裁判決が確定した。
従業員(およびその労組)に対して違法行為を行った事実を、田中副組合長が自ら認めた形だ。
この結果、田中副組合長が「組合の名誉を傷つけ、組織に損害をもたらした」ことが明白となった。
このような場合、組合規約107条(※)により統制処分の対象になることは明白だ。しかし後述するように、反省する気配は全くなく、統制委員会に告発すべき役目を負っている中央執行委員会、独立した機関であるはずの統制委員会も動こうとしないことが組合大会で明らかになった。
(※組合規約107条:
統制違反としての処分の対象となる場合
A 組合員が次の各号のいずれかにあてはまるときは、統制違反と
して処分の対象となる。(中略)
B 以上のほか組合の名誉を傷つけ、組合の組織に損害をもたらし、組合員に被害を与えるなど、悪質な行為であると認められた場合)
◯組合大会の論議
反省なき面々
第77回定期全国大会が昨年11月8日から4日間、晴海のホテルマリコットで開かれた。席上、渡邊執行部員(代議員)と藤田政男代議員が裁判関係について質問した。内容は要旨以下の通り。
◯裁判結果に対する反省と責任渡邊執行部員
「私の裁判について質問。活動報告書8頁の記載では、組合が敗訴した理由は、従業員規定と人事考課に不備があったためと受け取られかねず、判決の趣旨を歪曲している。「従業員規定と人事考課のさらなる明文化を図る」とあるが、具体的に何を指すのか?
そもそも裁判になったのは、長崎大会の藤澤元組合長の統制処分審議での私の発言が組合従業員として不適切という理由で、松浦中執から突然本部に呼び出されて反省を迫られ、減給処分や機関会議への出席停止処分を受けたからだ。
その前にも大阪支部長から根室事務所に転勤され、降格や嫌がらせを受けている。
判決は私の請求を受け入れ、降格・減給処分は人事権の乱用、機関会議への出席停止措置も統制権の乱用として、差額賃金と精神的苦痛に対する慰謝料百万円と弁護士費用を支払うよう命じた。役員が行った一連の違法行為が組合組織に損害をもたらしたのだ。
裁判に要した弁護士費用や慰謝料の内訳、組合と松浦中執がそれぞれ幾ら負担したのか?」
鈴木総務部長
「組合は適正な人事管理だったと主張したが、司法は違う評価だった。今後従業員に対しては、従業員それぞれが周りを評価(上位評価・下位評価)するやり方と、中央執行委員会がプロモートをする内規を検討している。損害賠償金を連帯して支払う件は、弁護士と相談して適正に処理したい。」
藤田代議員
「活動報告書に裁判報告が2件載っているが足りないのではないか。今年に入って8件の裁判があり全て負けているはず。渡邊執行部員の他に北山元中執、阿部元小名浜支部長、組合員の竹中さんの件では組合員資格を剥奪したことが東京地裁で規約違反の不法行為と判定された。いい加減このような違法行為はやめ、負けは負けとして認め、全ての裁判を終わらせ、本来の組合活動に邁進してもらいたい。中央執行委員会は負けた責任をどうとるのか?」
(本部側の答弁ナシ)
◯船員しんぶん報道について
藤田代議員
「北山元中執に対する1億円請求裁判は1月に最高裁で組合の完全敗訴が確定した。裁判を始めた時は船員しんぶん一面を使い大々的に報道したのに、負ければ何も報告なしでいいのか。みっともなくても報告はちゃんとするべきだ。裁判結果を船員しんぶんで報告する気があるのか。」
松浦副組合長
「既に解決したもの、まだ判断が出されず協議中のものなど、沢山の裁判がある。中央執行委員会や全国評議会に報告して承認を頂いたもの、まだ報告してないものもある。報告は1年間ということなので、時間的な問題、タイムラグがあるので、ご理解を。」
藤田代議員
「タイムラグと言うが、1億円裁判の最高裁判決は今年1月の話。僕は船員しんぶんに載せる気があるかどうか聞いただけでそんな難しい話ではない。載せる気がなければそう答えれば済む話です。」
立川中央執行委員
「船員しんぶんはその時々で組合員に伝えたいことを掲載している。重要かどうか判断しており、
現時点で掲載する気はない。時期
的な問題もあるのでご理解を。」
◯統制委員会開催について
藤田代議員
「一連の裁判で組合は連戦連敗、
役員個人の不法行為も認定されて
いる。これは規約第107条B項に該当すると思うので、統制委員長の見解を聞きたい。組合員の名誉を傷つけ、賠償金の支払いで組合に損害を与えた。中労委からも不当労働行為と判定された。組合の名誉を傷つけたのでは?」
勘場中央執行委員
「統制委員会につきましては、組合規約に基づき適正に対処しているのでご理解を。」
◯従業員労組への対応
藤田代議員
「3年前に組合内に従業員労組ができ交渉を申し入れたが、組合は未だに労働協約を結んでいない。
組合が団体交渉を拒否したことが中労委により不当労働行為と認定され、組合は謝罪文まで出した。謝罪文は本部の掲示板にも張り出された。そうである以上組合は従業員労組を認め、労働協約を締結すべきだと思うがどうか。」
鈴木総務部長
「従業員労組が結成され、私も交渉委員。9回の団交が開かれ、14条の暫定労働協約申し入れのうち12項目は合意したが残る2つが合意していない。時間がかかり過ぎると思われるかも知れないが、慎重に対応していきたい。」
松浦副組合長
「従業員労組の問題は、一人の方が、裁判、中労委、地労委と一連の行動をしている。従って海員組合側としても一連した対応を取っているまで。」
◯裁判費用
藤田代議員
「北山元中執に対する1億円裁判の費用の件で質問。顧問弁護士の顧問料は月々幾らか? 3年間の裁判費用、顧問料以外の弁護士費用は合計幾らか?」
鈴木総務部長
「弁護士の顧問料は言えない。世間相場ということでご理解を。裁判費用や弁護士費用も相手との関係があるので言えない。」
本部側はこのような答弁に終始し、多額の弁護士費用や賠償金を組合に負わせたことへの反省は微塵もないことが明らかになった。
1億円裁判は、当時の藤澤組合長が反対したにもかかわらず、現三役らが強行した結果敗訴した。
自ら裁判を起こし多額の組合費を使っておきながら、結果は報告せず、要した費用を聞かれても答えない。責任問題も不問にする。無責任の極致としか言いようがなく、まさに組合の私物化である。
ちなみに、本四海峡バスの元組合員らとの裁判に要した訴訟救済費(主に弁護士費用)は年間680万円、弁護士の顧問料(訴訟救済費とは別)は一人月15万円と当時の役員は大会でちゃんと回答し、機関誌にも掲載している。
それが労働組合のあるべき姿であり、現在の役員は海員組合の伝統を汚している。(顧問料はその後上がったと聞くが定かでない)。
◯竹中の組合員資格確認・組合長選挙無効裁判
再度の除籍、2月8日判決へ
組合と3人の被告(森田組合長・田中・松浦副組合長)は、地裁判決を全面的に不服として東京高裁へ控訴、私も、2013年組合長選挙の無効、謝罪文の掲示、森田・田中副組合長の不法行為責
任に絞って控訴した(前号)。
昨年11月30日、高裁の第一回弁論が開かれ、双方が提出した書面と証拠の確認が行われた。その後、裁判長は本日結審し、2月8日に判決を出すと宣言した。
そのやりとりの中で、組合側はこともあろうに、東京地裁の結審後に当方に秘密裏に、「反論補充書」なるものを東京地裁に提出していたことが判明した。
私の弁護士が、「当方には送られていない。内容が分からないので反論のしようがない」と抗議したところ、組合側もその事実を認めざるを得ず、すぐさま送付することを約束した。
常軌を逸した組合のやり方に裁判長も一瞬困惑したのち、当方に対して、それに対する反論書を出すよう促した。通常、結審(審理の終了を意味する)後に提出された書面は審理の対象外となるが、異例の措置となった。
また、組合は地裁の場で、私の組合員資格を認めると表明したにもかかわらず、11月初旬に再度の「除籍」通知を郵送してきた。秘密裏に「反論補充書」を提出していた件といい、高裁審理中の再除籍といい、策を弄した対応には驚くばかりだ。
田中副組合長は出廷を回避
席上、当方は証人として三宅元中執(竹中側証人)と田中副組合長本人を申請したが、組合側はすぐさま、「証人調べは必要なし」と拒絶反応を示した。
会計帳簿の閲覧申請を拒否したことが規約違反と地裁判決で認定されており、その決定を行なったのは田中副組合長であることが明らかになっている。やましい点がなければ、堂々と出廷して証言するのが普通だと思うのだが、その考えはないようだ。
この結果、裁判長は証人尋問は行わないと表明し、結審した。
◯海員労組による賠償請求裁判(北山元中執再雇用拒否)
田中副組合長は堂々と出廷を
海員組合は昨年9月末に、北山元中執に対する再雇用拒否が不当
労働行為であったことを認め、石川県労委の命令に従い謝罪文を提出。3年分の給料を支払い、北山
元中執は原職である呉海員会館の館長に復帰した(前号)。
この裁判はそれ以前に提訴されていたもので、1月20日に2回目の弁論が開かれ、海員労組側は被告である田中副組合長の証人尋問を要求した。しかし海員組合側は難色を示した。また、組織の責任と役員個人の責任は異なると主張、役員個人の賠償責任要求に対する反論書を提出する予定と述べた。
組合側には、負けを覚悟しつつも、副組合長の個人責任だけは逃れたい様子が見え見えだった。
次回は3月10日(金)午前10時半、東京地裁519号法廷。
4件目の不当労働行為認定
1月11日、石川県労働委員会は、海員組合の不当労働行為を断罪する命令を出した。従業員労組に対する不当労働行為は既に3件確定しており、今回で4件目だ。
海員組合は命令を受け入れて謝罪文を提出したが、海員労組側は命令が不十分であるとして、中労委へ再審査申立を行った。
(詳細は次号)